『偽物語 上』西尾維新 ツンドラ、変態、妹(大小)、巨乳委員長、ロリ婆吸血鬼、噛み付き娘に捕食者――よりどりみどりのアララギハーレム! 推定残り寿命マイナス七秒!

――でも半分は吸血鬼だから死ねない。

 さてもちろん、今このタイミングで『偽物語』の上巻を手にしたのは、下巻が出たからである。
 読み始めれば、止まらない。読まれない本は、物語ではない。作者と本と読者の三位一体がそろって、はじめて物語は存在する。これを逆しまにすれば、物語が要求するからこそ作者は本を書き、読者は本を読まされるとも言える。
 そう――読まされる。
 西尾維新を――読まされる。

 そして読み始めたらファイヤーシスターズよろしく止めようがないのであれば、当然、読み始めなければいいのである。読書という行為は本質的に一次元だ。開始信号(AUG)を読み取ってしまうから停止信号(UAGあるいはUAAあるはUGA)まで止まらないのである。つまり、一ページ目を開くことさえなければ、二ページ目を読むことはない。完璧である。

 しかし、下巻が出たのであれば問題ない。私は広島県立総合体育館(三沢さんの魂に安らぎあれ)で週末のウェイトトレーニングをはじめる前に本屋によって『偽物語』の上巻と下巻を買ったのである。

 ウェイトトレーニングは、読書にはあまり向いていない。不可能とは言わないが、使用する器具の多くは両手を塞ぐ。ベンチプレスで本を読むには、足の指でページをめくる必要があるのだ。不可能ではないが本が皺だらけになるのでオススメはできない。
 例外は、自転車だ。自転車なら漕ぎながらでも本は読める。だから、『偽物語』の上巻を持って自転車のサドルにまたがったのは、ごく論理的な帰結だ。あえて言うなら、トイレに本を持ち込むくらい日常的な行動である。

 これが大失敗。
 思えば、トイレに本を持ち込むと、外に出たら移動式トイレが庭に増設されているような子供であった。

「ん? あ、いかん、もうこんなに時間が経過していたか。ウォーミングアップ終了、さて次は――うぐおぉぉっ?」

 太腿が、ぱんぱんに張っていた。乳酸菌がほどよく毛細血管に詰まり、転倒しそうになる。いったいなぜ自分は今の今までこの痛みを感じていなかったのか。武道の達人が痛覚を一時的に麻痺させるようなものか。どんだけ読書の達人なのだ自分。いやいや、むしろ読書によって脳内に快楽物質が耳からあふれるほど噴出していただけか。どんだけ(脳内)麻薬の売人なんだ西尾維新。

 それでも残りのメニューはきちんとこなし、シャワーも浴びて家に帰ってじっくり本を読もうか。ああでも、太腿がまだ痛いから、ちょっとそこのベンチに座って休むとするか。おや、鞄の中にちょうど買ったばかりで読みかけの『偽物語 上』が。

(SANロール。ころころころ……21。失敗)

 ――はっ?
 しまった、気がつけば根が生えていた。いかんいかん、にわか雨がふりはじめなかったら、このまま読み終えるまで動けないところだった。

 そういうわけで、何とか1d4点のSANと引き替えに家に帰ることができたのである。

 で、『偽物語』上巻の感想はというと――これから下巻を読むのだ、邪魔するな。

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