九十九乱蔵さんて、笑顔がいい♪(21年ぶりの新刊『闇狩り師 黄石公の犬』を一読して)
「闇狩り師」シリーズの新刊が、ノベルズ判小説で刊行された。
『闇狩り師 黄石公の犬』って題。
2009年6月30日初刷りの、トクマ・ノベルズ。
大男で、肉体派の仙道士、九十九乱蔵さんのお話で。
著者は、「陰陽師」のシリーズでお馴染みの、夢枕獏さん。
腰帯に“まさに待望、21年ぶりの最新刊!!”ってある。
実に久しぶりの新刊を購入して、面白く読みました♪
「闇狩り師」のシリーズは、現代日本を舞台にした、オカルト・アクション小説のシリーズ。
確か、作品内では「闇狩り師」って言葉は、ストレートに使われないはずで。少なくとも、作中の世間一般では知られてないし、その筋の方々の間でも、多用されるような言い方でもない。
ちょっと旧作を読み直さないと、記憶も曖昧だけど、確か作中では「闇を狩る」みたいな言い方が、ごくごくマレに使われることはあっても、「闇狩り師」って言葉、セリフとかで使われてはいない気がした。
「闇狩り師」って言葉は、つまり、作品のコンセプトみたいなもんを示唆してる、作品外の言葉なのよね。多分。
九十九乱蔵さんは、気は優しくて力持ちの仙道士--民間道教の修行者。
作中では“祟られ屋”とか言われることもある。“祟られ屋”って言うのは、祟りを自分に引き寄せるようなことをしても、あれこれやってる内に浄化させちゃう、みたいなイメージ。
拝み屋さん、祈祷師、お払い師とはちょっと違うニュアンスが魅力。
小説は、今風の異能バトル小説なんかと比べると、地味な印象だろうと思うんですけど。
そこがいい♪
例えば、『黄石公の犬』では、犬の妖物の依り代になってる老人の噂が、九州の山奥の町で、ローカルな噂になってる。この様子を、“闇狩り師”の九十九さんが、依頼人から聞きだすときの語り口とかがいい。
ローカルな噂だったら、こういう噂話も広まるかもしれないな、ってありそうに思える感じがよくて。
こういう味わいって、スケールの大きさとは背反するわけ。
つまり、この小説のいいとこ、味わいは、地味と思う読者さんもいるだろう面と裏腹って話。
『黄石公の犬』のいいとこは、何よりも描かれた作中の世界に“闇の匂い”が感じられるとこなんだけど。
そういう、小説のいいとこは、改めて別に書く気でいます。
それより、ここでは、ちょっと別のお話、九十九乱蔵さんの笑顔の話をしたい。
『黄石公の犬』では、著者あとがきが、こんなふうに書き出されてる。
実に実に、久しぶりに、『闇狩り師』シリーズの新作を、ここにお届けしたい。
『黄石公の犬』--短編のつもりで書き出したら、あっという間に長くなって、中編を超え、長編となってしまった。
何年ぶりになるだろうか。
十五年--二十年ぶりか、それ以上になるかもしれない。しかし、この二十年(だとして)、このシリーズをさぼっていたわけではない。
未完の長編『宿神』を書いていたし、今回の『黄石公の犬』や『媼』を書いてきたのである。
『黄石公の犬』について言えば、年に二回か三回刊行される『SF Japan』に連載していたため(しかも一回ずつの枚数が少なかったため)、完結するまで時間がかかってしまったのである。
夢枕獏さんが作家のお仕事をさぼってないことは、アタシだってよく知ってる。
「闇狩り師」のシリーズもさぼってたわけでもないのも、新刊を読んでわかった。
アタシが嬉しかったのは、作中の、九十九乱蔵さんも闇狩り師を、さぼってはいなかった様子。
これが、とても嬉しかった♪
その車は、四輪駆動車である。
ごつい、四角いボディをしていた。
ランドクルーザーであった。
新型のスマートな車体ではない。
旧型--60系の古いタイプのランドクルーザーである。
三一六八CCのディーゼルエンジンが、重いうなり声をあげていた。
「闇狩り師」のシリーズの作品は、どれも、背景の時代がいつ頃なのか、あまり細かくは絞られてない。
だから、作品が21年ぶりの新刊だからと言って、作中でも21年たったとも思えない。
それでも、と、言うか、にもかかわらず、と、言っていいのか迷うけど、物語内の世界でも、それなりの年月が経てるような気はする。
乱蔵さんのランクルも知らないうちに旧型だし。何より、ミスター仙人も、携帯もってるのだ。(「ミスター仙人」は、やっぱり小説作中では使われないけど、乱蔵さんの愛称のような感じ)
そりゃ、お仕事柄、持つよね、とは思うけど。ご時勢だわ(笑)。
時勢を感じさせながらも、作中世界の連続感は保たれてて。
ファンとしては、それが、とても嬉しい。
かと言って、九十九乱蔵さんが、老けたとかそーゆーことはありません。
かなりのハイレベルで仙道実践してる人ですから、普通の人より、外見年齢、生理年齢共に老化のペースが遅くっても不思議でもないし(笑)。
むしろ、前よりも、もっと渋くなった印象かなー。
そこもいい♪
決してハンサムという貌だちではなかった。
どちらかと言えば、貌だちはごつすぎるくらいである。
しかし、その眼にはなんともいえない、愛嬌があった。
不思議に、人を落ち着かせる優しい光がその瞳の中にある。
年齢は、三〇代の半ばくらいであろうか。
アタシの妄想では、九十九乱蔵さんは、決してハンサムという貌だちではなくても、いい男なのね。
好き嫌いで言うと、アタシは「男らしさ」とか「女らしさ」とかにこだわるような考え方は好きじゃぁない。
世のなかには「いい男」とか「いい女」とかっていて。アタシだって、いい男やいい女は好きだ。
このニュアンスの違いは、わかる人にはピーンとわかるものだけど。
しいて言うなら、「男らしさ」とか「女らしさ」とかにこだわる考え方が、脅迫神経症っぽくなるまで行くと、はっきりと嫌い。
そして、「なんとからしさ」みたいな考えは、こだわりが強ければ、脅迫神経症っぽい感じまで行っちゃうものなのだ。
乱蔵さんの話だった。
アタシを、ほっとさせてくれるような笑顔で笑うことができる、いい男が乱蔵さん、って言うのがアタシの妄想なのだ(笑)。
「闇狩り師」と言うくらいなので、乱蔵さんは、怪しいものごとへの好奇心や探究心は旺盛。仕事柄、ゾッとするような出来事や、嫌な事柄もあれこれ見知ってる。
それでも、ほっとするような笑顔を喪さないでいる。そんな、いい男が乱蔵さん。
アタシは、乱蔵さんのそんなとこが好きだし、21年ぶりの新刊『黄石公の犬』でも、そんな乱蔵さんは健在で。それがとても嬉しかった♪
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