「航空宇宙軍史 『終わりなき索敵 上』」「航空宇宙軍史 『終わりなき索敵 下』」谷甲州 著

 航空宇宙軍史シリーズ中、現時点(2009/07/18)において、唯一新刊で購入可能な書籍です。
後は、中古書籍に頼るしかないという悲しさがあります。

 そう、そして本作もやはり人類側の敗北という悲しみに彩られた作品であり、
敗北から逃れるためにもがく人類側の苦闘です。

 時間軸が入り乱れる過去改変の繰り返しを拒もうとする世界法則
航空宇宙軍と敵対的な姿勢を崩さず、劣勢な科学水準・社会体制からノウハウを積み上げ時間と共に強敵と成る汎銀河連合
航空宇宙軍内部においても、過去改変を拒み、現序における努力を至上価値とする抵抗勢力。

 泥沼でもがく人類最後の輝き。負け戦であり、非常に地味な演出が繰り返される、文字通りに読み手を選ぶ作品でしたが、
ああ、これは良い物でした。シリーズが絶版なのは悲しいなぁ(遠い目)

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航空宇宙軍史

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「なぜ山に登るのか?」に通じる、谷甲州さんのストイックさ

 『終わりなき索敵』を読んだときに、感動すると同時に私が最初に感じた違和感が、

「なぜ、こんなことをするのか?」という動機にからむ部分でした。

 航空宇宙軍も、汎銀河連合も。
 そして、登場する個々の人間も。
 魅力的な話であり、キャラであるがゆえに、「なぜ?」という動機に絡む部分が、どうにも弱く感じられたのです。

 これは、谷甲州さんの他の著作、たとえば『軌道傭兵』や『覇者の戦塵』にも通じるのですが、谷甲州さんのお話には、動機部分を曖昧にする、あるいはあえて語らないことが多いように思います。
 いや、語りはするのですが――読者を納得させよう、理解してもらおうという押しつけめいた部分がないのですね。

 これは、谷甲州さんという方の、パーソナリティに関わる部分なのでしょう。

「なぜ、山に登るのか?」
「自分の命を失い、他者に迷惑や心配をかけるリスクをおかすだけの価値が、どこにあるのか?」

 これは、山での遭難事件が報じられるたびに、私の友人が口にする言葉です。そして私は決まって答えます。

「自分に感じられない価値というものは、説明されたからといって、納得できるものではないだろ」

 何に価値を見いだすか。何を貴重だと思うか。愛か、信仰か、富か、権勢か。
 それは人によって違うものです。だから、他者に自分の価値を押しつける、あるいは他者の価値を否定するのではなく。自分が大切だと思うものを得る、守るために行動する。

 そうした姿勢が、谷甲州さんの生き方の根底にあるように思います。

 だから私は谷甲州さんの作品を読むたびに、実にストイックであられるようなぁ、とうらやましく思う反面。
 物足りなくも思ってしまうことも、しばしばあるのです。

市民、それは貴方の『セキュリティ・クリアランス』では知ることの出来ない情報です。

 航空宇宙軍の中にも、なぜこんな強硬政策をとるのか疑問に思う人も居ます。
しかし、そんな彼らも階級が上昇し、セキュリティ・クリアランスが該当の情報に到達すると、突如として理解するのです。

 「そうか、我々が生き残るには、徹底した闘争以外に方法はない。闘争に勝利するためには、弾圧による弱体化以外にあり得ない。」と……

 当然、読者は置いてきぼりです。開示された「情報」に基づく判断なのか、航空宇宙軍に共通する「価値観」で判断したのか。
私には、本気で解りませんでした。登場人物に没入させない、同化させない、これは徹頭徹尾貫かれています。

 世界は解らないことで満ちあふれています(とほほ)
 


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