『仮面ライダーW』第11話-第12話「復讐のV」:正義のフィーリングが試されるドラマ

 『仮面ライダーW』の第11話~第12話、「復讐のV」前後編が、面白い。

 9月に放映が開始された「ライダーW」も、1クール(13話)を消化しようとするあたり。毎回、調子をあげてきてる感じ♪

 番組を観てない方も想定した説明をしとくと、『仮面ライダーW』は、架空の都市「風都」を舞台にした変身ヒーローものドラマTV朝日系列で、主に日曜日の午前中に放映中(他の曜日、時間帯に放映される地域もある)。

 「2人で1人」のデコボコな私立探偵コンビと、自称探偵事務所所長のなにわ娘の3人が、コミカルな探偵もの設定で登場。デコボコなコンビが、やっぱり2人で1人で、仮面ライダーWに変身して、「警察が相手にしない」怪しい事件や、事件の背後で動く怪人(ドーパント)を挫いていく。
 ベースになってるコミカル味を活かしたままで、シリアスな中身のブレンド分量を増してきてて、いい感じ♪

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 「復讐のV」の前編、第11話「感染車」は、冒頭の「これまでの、仮面ライダーWは」の大筋紹介に続いて、深夜の街角で起きる当て逃げ交通事故のシーンから始まる。
 数日後の夜、鳴海探偵事務所に、切羽詰まった感じで「命を狙われてるんだよ!」って電話がかかって来るシーンが続いて。一方の主役左翔太郎(演者=桐山漣さん)は、そのまま指定されたらしい場所までバイクで出向く。

 しかし依頼人の男は、翔太郎の目の前で怪しい自動車に襲われる。ボディに葉脈か血管みたいな模様を浮き出させた黒いワゴン車が、依頼人に突っこむとすり抜けてしまう。
 だいじょぶか、と駆け寄る翔太郎の前で、唐突に痙攣しながら倒れ込む男。
 少し離れた場所に停まっていたワゴン車は、カーステレオから大音響で調子のいい音楽を流しながら、悠然と走り去っていった。

 男の脈を診ていた翔太郎は、眉をひそめるようにして、怪しい車が走りさった闇を、見つめるのだった。
 風都の深夜、人気の無い街角を、細く高い風の音が、吹き抜けていた。

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 『仮面ライダーW』には、過去の仮面ライダー番組と、目だって違うとこが、幾つもあります。

 例えば、敵対する怪人が、必ずしも敵性組織に属してない。
 体質的に適合する人間だけに、超人的な力を与えるガイアメモリってのが設定されてて。主役2人組もこれでライダーWに変身。
 敵性組織「ミュージアム」は、風都で、このガイアメモリをこっそり密売してる。で、メモリを購入した連中が、それぞれの欲望を満たそうとして、それぞれ勝手に怪しい事件を起してく。

 左翔太郎は、頑張ってはいるけど、私立探偵としては、まだまだ駆け出し。作中でも「ハーフボイルド(半熟)」て言いまくられてて(笑)、頼りないとこがある。
 相棒のフィリップくん(演者=菅田将暉さん)の方は、天才は天才で、情報収集や分析に抜群の能力を示すけど。性格にかなり難のある世間知らずで、引きこもり。

 こんなデコボコなコンビだけど、風都ではドーパントのお陰で「警察が取り合わない」ような怪しい事件がちょくちょく起きるもんだから、探偵事務所もやってけてる様子。
 普段は、迷子になったペット探しとかもやってるけど(笑)。回が進むに連れて、どんどん怪しい事件の依頼頻度があがってきてるっぽい。

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 「復讐のV」の前後編は、ベースになるコミカル味に、ちょっとビターな雰囲気も、うまくブレンドされたエピソード。前編(第11話)「感染車」の、アーバン・パート(OP前)から、結構雰囲気がある。
 まず、いつも風が吹いている街「風都」に、強い雨が降った夜のシーンから導入。

 1人で深夜の横断歩道を渡って行く、白いコートの女性。
 失踪して来る車のぎらつくライト。
 空中を舞う赤い雨傘。
 1度速度を緩めながら、アクセルを踏み込んで走り去るワゴン車。
 横断歩道の上に横たわり、雨にうたれる女性。

 この後、探偵事務所に依頼の電話、出かけていった翔太郎の前で、人をすり抜ける怪しい車が依頼人を殺害、と展開する様子はもう書いたけど。3分ほどの間に細かなカットを積み重ねて、架空世界の雰囲気までも印象的に描写。ビター→コミカル→ビターと、雰囲気も転調させてる。

 特に、最初の交通事故のシーンで、赤く開いた傘が、雨の夜空を背景にくるくるっと回るカットは、ちょっと綺麗。
 開いた傘が、くるっと回ってゆっくり落ちてくるのね。実際、夜間にライトあてながら撮ったみたい。

 お金のかかったCM画像なんかには、もっと美麗な映像もあるけれど、コミカル・ベースなドラマの内に挟まれると、ハッとするような詩情を生んでる。
 もちろん、当て逃げの交通事故を暗示する画像だから、「現実にあり得る、小さな残酷さ」が籠められた、哀しい詩情。
(この赤い傘の映像は、第11話-第12話「復讐のV」前後編では、要所で何度か、効果的にインサートされる)

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 OPを挟んで、風都警察署の場面。翔太郎は、腐れ縁的に顔なじみな刑事に、死んだ男について事情聴取を受けてた。電話で呼び出された男、アオキが、ウィルスに感染して死んだ、って聞かされる翔太郎。

 警察署のロビーでは、翔太郎の探偵の師匠、先代鳴海探偵の娘、鳴海亜樹子(演者=山本ひかるさん)が翔太郎を待ってた。
 風邪っぴきなのに、身元引き受けに来たって言う亜樹子を、「ただの参考人だっつーの」と、そっけなくあしらう翔太郎。
 「でも、昨日電話してきた人、死んじゃったんでしょ?」
 「あぁ」
 「じゃぁこの件からは手を引くしかないわね」

 鳴海亜樹子は、自称、探偵事務所所長なんだけど。しょっちゅう暴走しちゃ、捜査を引っ掻き回す(笑)。まー、ちゃんとやってることは、事務所マネージャー。ハードボイルドを気取ってる翔太郎に、金銭面とか、現実的なクレームをつける役どころでもあるのね。

「じゃぁこの件からは手を引くしかないわね」
「いや、……俺はやるぜ」
「でも」
「目の前で依頼人がやられてるんだよ。黙って引き下がれるかよ。それに……
 あの車は、泣いていたんだ」
「はぁ? 車が泣くわけないじゃん(笑)。だいじょぶ(?)、熱ある?? 風邪うつした? あは。んなわけないか(笑)」

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 変身ヒーローものドラマって、たいていは、常識を越えた陰謀とかを巡らす相手がヒーローの敵役で。アタシもそーゆータイプの作品は好き。
 警察とかでは対処しきれない事件を、特撮とかで描いて欲しいし。できれば、天才と紙一重みたいな悪役や、もう、いろんな意味で壊れちゃってるでしょ、みたいな敵役が、ヒーローの前に立ちはだかってくれると、言うこと無し。

 特に、仮面ライダー系の作品は、そうした、法規想定外の陰謀に、独自に立ち向かってくヒーローの物語が基本ラインだったんだけど。『仮面ライダーW』は、実に微妙なラインを狙ってきてる。

 第11話「復讐のV/感染車」も、微妙なポイントを突いてきてる変身ヒーローのドラマなのだわ。

 主人公たちは、交通事故被害者の弟がガイアメモリーの力で怪人化、姉の復讐を試みてると考える。
 「犯罪被害者の縁者が、真犯人と確信はしてても、証拠不充分な相手に復讐を試みる」。このプロット(筋)だけなら、警察とかでも対処可能な範囲の動機だし事件。実際、刑事モノドラマなんかでもありますよね、そーゆーお話は。
 たまたま、ガイアメモリが関与してくるから、警察の想定外になって、ライダーWの領分になってくる……ようにみえるんだわ。でも、前編のラストで、この想定がひっくり返る。

 前編終盤で、ライダーWが、無事、人をすり抜けて致死性ウィルスを植えつける感染車を食い止めるけど。実は弟は、ガイアメモリを使っていなかった(!!)。じゃぁ、ドーパントの正体は誰!?
 この展開は、割と面白い。
 ある程度、SFてゆーか、SF風味の変身ヒーローものを観なれてる人だと、ヴァイラス・ドーパントの正体も、想像はつくかもしれないけれど。
 それでも、後編(第12話)「復讐のV/怨念獣」で、ヒーローたちが、ドーパントの正体に迫ってく描写は、面白いです。

 どんなふうに面白いか、アタシ(紹介者)なりに言ってみると、「主人公たちが、自分たちの信じてる正義のフィーリング(正義感)が、どこまで通用するか、身をもって試してくような様子」が面白い。

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 ちょっと前編の展開をトレースしてみます。
 次々、怪しい自動車に襲われるストリート・ギャングのメンバーは、当て逃げ事件の容疑者として訴えられたが、証拠不充分で警察は逮捕できなかったと、フィリップから知らされる翔太郎。
 ガイアメモリ使用者による復讐、とみた翔太郎は、被害者の弟、山村康平を追っていくが……。

 最後に1人残ったストリート・ギャングのリーダー黒須が、怪しいワゴン車に襲われそうだ、と聞いて、バイクを駆る翔太郎。
 「1つ訊いていいかな」、Wドライバー(ライダーWのベルトね)を通じて、翔太郎と意識交感状態に入ってたフィリップが問いかける。

「1つ訊いていいかな」
「なんだ」
「黒須って男、僕らが救う価値はあるの?
 だって、その男はこの街にとって有害以外の何者でも無い。山村康平って男の事情を考えると、むしろ復讐させてあげても構わない。
 それが自然じゃないの?」
「……かもしれねぇなぁ」
「だったら」
「でも、俺は黒須を守る。
 例え、人間のクズでも、この街の人間だ。殺させるわけにはいかねぇんだ。それに……復讐なんかで、康平の哀しみは消えやしない」
「ハーフ・ボイルド……。とても不合理だけど、君らしい応えだ」

 事務所にいたフィリップは、一応訊いてみたけどやっぱりね、って感じでサイクロンのメモリを装着。
 バイクを駆る翔太郎も、ジョーカーのメモリを装着。

 “サイクロンっ!”“ジョーカーッ!!”

 ライダーWに変身した2人は、復讐の感染車に襲われているストリート・ギャング、黒須の元へ向かう。
(仮面ライダーWは、Wドライバーを装着した左翔太郎の身体に、フィリップの意識も同調し「2人で1人」のヒーローとして変身した姿なのだっ!)

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 上のやりとりで、翔太郎は、まず、ストリート・ギャングのことを「人間のクズ」呼ばわりしてるけど。黒須ってキャラが、そう呼ばれても仕方ない奴だってことは、作中できっちり点描されてる。
 例えば、人身事故を起した時、一度車を停めて様子をうかがいながら「やっちまったもんは、しょうがねぇやな」と笑いながら走り去ってく様子。あるいは、復讐の感染車に襲われた時、「俺は悪くない」と口から出ませな言い訳をする様子などなど。

 仮面ライダーWに限らず、変身ヒーローものって、全体としては、現実にはあり得ない出来事を描く物語だけど。あり得ない出来事の構成パーツに、こういう、現実にもいるだろう小悪党を描きこんで、うまく扱ってる例は、皆無ではないけど貴重。
 巧く、ヒーローの言動のもっともらしさを増すように扱われる例は、貴重なのだわ。
 「変身」とかってのは、もちろんフィクションなんだけど。それと、ヒーロー・キャラの言動の「もっともらしさ/ウソ臭さ」とかは別な話じゃん。

 例えば、フィリップは、山村康平に「復讐させてあげても構わない。それが自然じゃないの?」と言ってる。
 この手のセリフは、アンチ・ヒーローのセリフとしては珍しくはないけど。
 「ハードボイルドを目指してるハーフボイルド」翔太郎との会話で使ってる、Wでの使われ方は面白い。

 「アンチ・ヒーロー」ってのは、例えばマーク・トウェインが描いたハックルベリィフィンが典型。はじめ『トム・ソーヤーの冒険』に、脇役として登場したストリート・キッズがハックルね。ハックルベリィフィンは、トム・ソーヤーの冒険に協力するけど、その後、トムがいい子っぽく育ってくと、「あいつもつまんない奴になったな」的に思う。
 「アンチ・ヒーロー」ってのは、こんなふうに、正調ヒーローが信奉するモラルの信条に懐疑的だったり、相対視するような視座を体現するタイプのキャラ。ダーク・ヒーローヴィラン(悪党)とは違って、正調ヒーローと、必ずしも常に対立するわけではない。

 「復讐のV/感染車」でのフィリップと翔太郎のやりとりが面白いのは、フィリップのアンチ・ヒーロー的な「復讐容認説」に、翔太郎が、まず「かもしれねぇなぁ」と応じてから、「でも、俺は~」って続けるとことか。

 アタシが思うには「でも、俺は~」に続く翔太郎のセリフ「例え、人間のクズでも、この街の人間だ。殺させるわけにはいかねぇんだ」は、ちょっと綺麗事に聞こえる。そこは、今のとこ仕方ないのだわ。
 ハーフボイルドがハードボイルド目指して背伸びしてるんだもん。どうしたって、綺麗事っぽい言葉が出てくると思う。
 でも、その後の「それに……復讐なんかで、康平の哀しみは消えやしない」は、割と、本音に近い感じの翔太郎の信条。

 何でかって言うと、翔太郎も敬愛する探偵の師匠(鳴海壮吉)を目の前で、ガイアメモリ密売組織に殺されてるから。フィリップも、その場面をすぐ傍でみていた。
 だから、フィリップも「ハーフ・ボイルド……。とても不合理だけど、君らしい応えだ」って応じたと思える。

 「復讐のV」の後編「怨念獣」では、翔太郎の正義感は、その信頼度が、「人間のクズ」と評したストリート・ギャングよりも、さらにどうしようもない不正義を巡って試される。
 フィリップの方も、致死性ウィルスを操るヴァイラス・ドーパントの本体に対面してく。

 こんなふうに、仮面ライダーWの2人組は「自分たちが信じる正義のフィーリング(正義感)が、どこまで通じるか、身をもって試してく様子」が面白いのね。

 果たして、ヴァイラス・ドーパントの正体は何者か(?)。さすがに、紹介文(レヴュー記事)で、そこまでネタバレさせる気はないです(笑)。
 『仮面ライダーW』のDVD、あるいはBDを待って!!

 ただ、これだけは言っときたい。

 前編「感染車」を観て、ヴァイラス・ドーパントの正体を予想できる人は、実はいると思う。
 それでも(予想が的中してる場合でも)、後編「怨念獣」のドラマは面白いはず。

 それは、なぜ復讐の邪魔をする、的に言う相手に「彼は、君にこれ以上誰も殺させたくないんだ」って相棒の意思を代弁して伝えるフィリップの、翔太郎への信頼感がいいからだし。
 怨みの情を演技する役者さんの演技や、メイキャップや、特殊効果を駆使して、演技を盛り立ててく演出がいいからだし。
 ヴァイラス・ドーパントをみて「俺には、まだあのドーパントが泣いてる気がするんだ」って言う翔太郎がいいからなのだわ。

 「正義」なんて、ただ、フィーリング(正義感)に身を委ねるだけじゃぁ信頼度が低いものじゃん。
 自分たちのフィーリングの信頼度を、ハーフボイルドとアンチ・ヒーロー、2人で1人のヒーローが、身をもって試してくようなドラマを、アタシ(紹介者)は、とても好ましいと思う。
 もちろん、今風にアップ・グレードされてる「正義の味方のドラマ」としていいと思うのだわ。

 誉めすぎ的に思った人は、いずれ発売されるだろう『仮面ライダーW』のDVDかBDを、買って観てちょーだい。

 も1つ書いとくと、「復讐のV/怨念獣」のラスト近くで、翔太郎が怒りを込めて拳をふるうシーンもいい。
 拳を振るうこと自体ではなくて、振るった後の、ちょっと言語化しづらい翔太郎の表情がいいのだわ。
 アタシには、強いて言うなら「苦いものを呑み込んだような」感じに思えて。翔太郎にしてはオトナっぽいじゃん(♪)と、感じた。
 つまり、“綺麗事”を通すのって、楽じゃぁないわよね、ってことなんだけど。

 このシーン、もっと違った含意を感じられる人も、きっといるはず、と思います。

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 ほんとは、この紹介文、「変身ヒーローもの」とか、それほどマニアックにファンてわけではない人を想定して、お勧め紹介したかったんだけど。後編のネタバレを徹底的にしないままで、そのタイプの方に紹介する方法が思いつかなかった。そこはちょっと、悔しい(苦笑)。

 とゆーわけで、仮面ライダーや、いわゆる平成ライダーが好きって人を、優先読者に想定した紹介文って線で、書いてみました。

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【おまけ】『仮面ライダーW』資料メモ
第11話「復讐のV/感染車」
監督=諸田敏、脚本=長谷川圭一、キー局オンエア=2009年11月22日

第12話「復讐のV/怨念獣」
監督=諸田敏、脚本=長谷川圭一、キー局オンエア=2009年11月29日

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Drupal.cre.jp から 木, 2009-12-24 08:45 受信

 『仮面ライダーW』の第13話~第14話、「レディオでQ」前後編が、面白い。
 まず、一方の主役フィリップ(演者=菅田将暉さん)を巡るドラマが、急転を予感させる面白さ。
 それに

覚書:平成仮面ライダーと「正義の味方」

 この文章は、『仮面ライダーW』について、アタシが考え中な話題の覚書です。

 親記事で紹介してる「復讐のV」では、前編「感染車」の後半で、鳴海亜樹子がこんなセリフを言う。

「来たーっ♪ 正義の味方っ!!」

 子分を次々倒されたストリート・ギャングのリーダー黒須が、ヴァイラス・ドーパントの力を得た感染車にとどめをさされそうになる間際、スーパー・バイクで駆けつけた仮面ライダーWが割って入る場面でのこと。
 やけになった黒須は、サブマシンガンを持ち出すと、無人の倉庫に立てこもり、感染車を誘き出そうとして、逆に窮地に追い込まれたのだった。
 亜樹子は、翔太郎の指示にそって黒須を尾行。倉庫の物陰から様子をうかがっていた。
 Wが駆けつけたのも、感染車をおびき寄せようとする黒須の切羽詰った様子を、亜樹子が翔太郎に連絡したからだった。

 亜樹子の「来たーっ♪ 正義の味方っ!!」ってセリフは、駆けつけたWが「待たせたなぁ」と亜樹子に告げるセリフへの応答。
 つながりはこんなふう--

倉庫内で感染車に襲われようとしている黒須。
ハードボイルダーで駆けつけた、サイクロン-ジョーカーフォームのW、感染車の屋根にバイクをジャンプさせ、バウンドで、感染車の前に走り出す(クラッシュする感染車のフロントウィンドー)。
そのまま黒須の脇を駆け抜け、背後でバイクを回頭させつつ停めるW。
W「待たせたなぁ」
亜希子「来たーっ♪ 正義の味方っ!!」
感染車の運転手「どうして……、どうして邪魔するんだぁっ!」
W「1番大切な人を奪われた、その気持ちは俺にもわかる。……だからこそ、やらせるわけにはいかねぇんだ!!」

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 この「来たーっ♪ 正義の味方!!」ってセリフは、いわゆる平成ライダー系作品ではかなり珍しい。

 まず、アタシの見通しから書いてくと。
 平成ライダー系作品は、「信じるに足る正義とはどんなものか、作中人物が身をもって試す」ようなドラマがかなり早い時期から描かれ続けてきてる。
 あるいは「主役キャラが、身を挺して実行を試みていける--その意味で(主人公にとって)信じるにたる正義とはどんなものか、身をもって探る」ドラマ、って言ってもいい。

 最初の作品『仮面ライダークウガ』の主人公、五代雄介は、「みんなの笑顔を守りたい」と語り、ほとんど笑顔を絶やさないキャラだった。そんな雄介が、最後の戦いで、とても辛そうな表情で戦い続ける様子が長く描かれたシーンは印象的。
 3作目の『仮面ライダー龍騎』では、主人公の城戸真司が、自分が戦う理由について「俺、わかったよ」と語るのは、最終回の1話前のこと。4作めの『仮面ライダー555』でも、成り行きで555のベルトを託された主人公の乾巧は、555であることに迷い続け、何度か変身用ベルトを手放していた。

 主人公が、「敵性集団との戦いを断続させながら、戦う理由(≒“正義”)の性質について迷う」ドラマは、平成ライダー作品で繰り返し描かれ追求されたライト・モチーフって言っていいはず。例外的に、主人公には迷いと呼べるほどのものが観えない作品(『仮面ライダー響鬼』)もあるけれど。

 だから主人公に近い作中人物が、「来たーっ♪ 正義の味方!!」って歓声を仮面ライダーにかける様子は、平成ライダーでは、かなり珍しくなってる。新鮮ですらあったのだわ♪

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 さて、「正義の味方」って言葉は、ウィキペディアによると、TV実写版『月光仮面』の主題歌が初出ってことみたい(2009年年末現在の記述)。1958年のことらしい。
 この件について、ウィキペディア(ja)の記述を信じないわけじゃぁないけれど。ここでは通説的にみなして、踏まえていきたい。
(TVドラマ以前に遡る、例えば講談本なんかに初出があるのかないのかどうか、調べるあても余裕もないから)

 今では定型句になってる感もある「正義の味方」って言葉は、日本語らしい曖昧さをもつ不思議な言葉。
 幾つかの重なり合った意味を孕んでるけど。対極的な含意の間の隔たりは、意外と大きい。

 もちろん「月光仮面について、の意味」は、「まず、主題歌での意味を解釈」して「解釈された主題歌での意味を、ドラマ作品の解釈と相互参照して再解釈」してくべきで。「月光仮面について、の意味」を言うなら、そうした手順は不可欠なんだけど。
 この覚書に記しときたいのは、概略「定型句としての曖昧な意味」→「平成ライダーとの意味関係」→「仮面ライダーWについての意味」って感じで考えてみてる考え中の、覚書なのだわ。

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 考え中なんですけど、『仮面ライダーW』について言われるのは、今のところ「正しい道義心(道徳心)の味方」ってニュアンスだと思う。とりあえず「だいたい、そんな感じ」。
 もう1段言い換えて「正しい道徳心を持つ人たちの味方」としてみると、これは月光仮面やクウガなんかにはあてはまるかもしれないけれど、上で、記した「感染車」で亜樹子が「来たーっ♪」って呼びかけてるセリフには、ちょっと相応しくなくなる。

 黒須はもちろん「正しい道徳心」の持ち合わせがないキャラとして描かれてるし、「感染車の運転手」の復讐遂行も「正しくはない」的に翔太郎も、おそらく亜樹子もみなしているからだ。ここで、フィリップの復讐是認説の面白みが際立ってくる。

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 「道徳心の中身は、人それぞれ」って言うのは、アタシたちが暮らす今の日本の社会的前提だ(良心の自由)。まず、良心や信条は、人それぞれ。そして、人々の間の利害を調停をするために、手続きを経た法規が合意されてる。その意味で、法規自体は、道徳的な価値とは別レイヤーで働く、ことになってる。
 別レイヤーで機能しても、全体としては、良心や信条、言論の自由も、保障することが要請されてるのが、今の法規。

 実際にはいろんな例外的な事態も起き得るけれど、考え方の順番としては、平時には、まず良心や信条は人それぞれで、だから、調停のルールが合意されてる、って考え方は基本。

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 こうした考え方を前提にしてみると、法規想定外の例外事態に「正義の味方」として関わっていくヒーローは結構辛いはずなのだわ。辛いのが当たり前ってゆーか。
 クウガにしろ龍騎にしろ、555にしろ、そんな辛さも描いたドラマではあった。

 アタシ的には、Wのドラマでは、このあたりのライト・モチーフが、これからどんな図柄で描かれていくのか興味があるのだわ。
 作中の左翔太郎が憧れながら今のとこ気取ってる、「ハードボイルド」とも、深く関連するはずの話題だし。もちろん、多くのハードボイルド探偵は「正義の味方」ではないけれど。
(アタシが思うには、むしろ信条の自由や尊厳を「ポリシー」って形で体現してくのが、ハードボイルド探偵)


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