「ネタバレ注意」魔法少女リリカルなのは The movie 1st感想

 今回の劇場版は、最初のTVシリーズの再構成と言うことになっているが、単純にTVシリーズだけの総集編ではない。テレビシリーズには登場しなかったキャラクターやエピソードが挿入された上で再構成されている。
 A'sやStrikerSへの伏線となるワードも登場しており、全体的なストーリーの流れはTVシリーズとほとんど同じである。しかし、途中の展開はいろいろ異なる点が多い。
 TVシリーズでは最初の数話はカードキャプターさくらっぽい展開で引っ張っていたが、劇場版は最初のエンカウントの時点でいきなりバスターを使ってバトル展開に突入する。おそらく、A's、StrikerSを経てシリーズがバトルものであるという認識がファンに浸透しているため、あえてキャラを見せるために時間をかけて描写をする必要がないと判断されたものと思われる。
 その後の展開はおおむね同じだが、戦術訓練などの描写やTVシリーズにはなかった過去の回想シーンなどが追加されており、ストーリーの描写演出がかなり練り込まれている。バトルはより迫力を増し、ストーリーもより感動的に進化していると言えるのではないだろうか。

 さて、ここからは細かいエピソードや設定などについて。

 追加されたシーンの中で特に目立ったのがプレシアの過去に関するエピソードと、1stシリーズ屈指の名場面であるなのはとフェイトの一騎打ちのシーン。実は、これらのシーンの多くは小説版で登場した内容だったりする。

 プレシアが作り出したフェイトの教育係であるリニスについては、第二期シリーズの魔法少女リリカルなのはA'sで少し登場しているし、サウンドステージのオーディオドラマにも登場しているはずだ。しかし、おそらく初出は小説版だろう。
 小説版ではアリシアには魔力資質はほとんどなかったという設定になっており、アリシアとフェイトが違う存在であることにプレシアが気づいてしまうきっかけのひとつとなっている。しかし、実際にプレシアが豹変してしまうきっかけはアリシアとは違うペットをかわいがったことにあった。この設定は劇中では説明が難しいためか使われておらず、かわりに利き手が違うという演出になっていたようだ。
 劇中ではプレシアの仕事の内容や事故後の裁判の結果については情報としては出てこず映像から推測するしかないが、小説版にはきっちりどうなったか書かれている。
 動力炉の設計においてプレシアは安全管理を担当しており、動力炉の危険性についても再三アラートを上げていた。劇中でも安全性に関する指摘をプレシアが上司に進言するシーンがあるが、あれはプレシアが品質管理に関わるスタッフのリーダーだったからだ。
 ところが、納期前倒しデスマーチで劇中でも登場した本社からの増員スタッフが安全確認工程を飛ばして作業を進め、プレシアは直接的なプロジェクトの管理権限を剥奪されている。これも小説版に描かれているプレシアの過去のエピソードとほぼ一致する。
 そして小説では、事故後の裁判において、安全管理を担当していたプレシアは会社から事故の責任をなすりつけられることになる。
 動力炉の事故も、一番の危険性は爆発などではなく、毒性のある粒子をまき散らしてしまったことにあった。実験中爆心地にいたはずのプレシアが生き残り、遠くで見ていたアリシアが死亡したのはこのためだ。アリシアの死亡確認が行われたシーンでスタッフが防護服を着ていたことから、この設定がそのまま使われていることが分かる。もちろん、プレシアの病気もこれが原因である。

 それから、なのはとフェイトの一騎打ちのシーンについて。このシーンは原作でも屈指の名シーンなので、TVシリーズの時の内容を覚えている人も多いだろう。
 映画ではどう変わったかというと、主に戦術設定などの細かい裏設定にあわせて内容が再構成されている。
 TVシリーズの時は、なのはがアクセルシューターをおとりにして上空から打撃による奇襲を仕掛けるというシーンが印象深いが、劇場版ではこのシーンは削られてしまっている。これは、なのはが得意とする戦術は砲撃を切り札にした遠距離戦闘であり、自分から近接戦闘を仕掛けるような戦闘は行わないという設定を反映したものと思われる。
 さらに、TVシリーズでは最後の攻防は「フェイトがバインドを仕掛けてファランクスシフトで攻撃」→「耐えきったなのはがディバインバスターで反撃」→「なのはがバインドでフェイトをとらえてスターライトブレイカー」という流れになっているが、小説版では真ん中のディバインバスターによる反撃がない。その代わりに、設置型の高出力結界でファランクスシフトに耐え、残魔力がないと思わせておいてまさかのスターライトブレイカーという展開になっている。
 劇場版ではこの攻防はTVシリーズを踏襲しているが、なのはのセリフでスターライトブレイカーが使い切れなかった魔力を集めた収束砲であり、大威力の攻撃にもかかわらず当人の魔力がほとんど空っぽの状態でも撃ててしまうことが説明されている。私の知る限り、この部分について解説されていたのは小説版だけだ。

 他、戦術訓練の様子などコミックス版から取り入れられているシーンもあった。というわけで、真に映画が初登場となるシーンや設定は実はあんまり存在しない。
 細かい裏設定に矛盾しないように丁寧な描写がされているので、小説版を見ているのと見ていないのとではだいぶ印象が変わると思う。とは言っても、小説版はコミックスや他のグッズに比べてかなりレアで存在を知らない人も多いだろうが……。

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