OtND 0x0b ロールプレイ支援の誤謬

 TRPGがルール本位のゲームに回帰した背景には、当時一世を風靡した「World of Darkness」シリーズと、ストーリーテリングを重視したシステムの台頭がある。
 今だからこそ言えることだが、90年代前半までのTRPGは洋の東西を問わず、デザイナーとユーザーの区別なくゲーム・バランスを軽視する傾向にあった。ゲームというものがよく理解されていなかった、というべきだろう。
 ゆえにユーザーは、「ストーリーテリング」の方向に面白さを求めた。風向きが変わったのはやはり、Magic:the Gatheringを嚆矢とするTCGブームが起こった後である。

 この頃は「ストーリーテリングのためならばルールを無視しても良い」という風潮があり、いくつかのゲームが「優れたストーリーテリングに対してルール的なボーナスを与える」という試みをした。
 しかしながら、この試みは結局のところ十分な成果を挙げたとは言えない。

 ひとつには、「ストーリーテリング」というものに対する誤解がある。我々が「ストーリーテリング」と呼んでいるものの実体は「即興劇」に近いもの(ただしそのものではない)なのだ。
 優れたストーリーテリングを引き出す秘訣は「優れた前振り(即興で言うところのオファー)」にあり、ロールプレイ支援システムの多くは前振り自体はあまり重視しない。
 これでは、「カッコイイ台詞」は出るかもしれないが、「カッコイイ掛け合い」にはならない。また、「掛け合いができない人」に掛け合いを強制などできようはずもない。このボタンの掛け違いは結局正されることはなく、いわゆる「冬の時代」を経て、TRPGがルール本位のリソース管理ゲームとなる潮流をつくったと筆者は考えている。

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