一条ゆかり、著、『正しい恋愛のススメ』コミックス版5、恋愛の正解と不正解
イケてる中年熟女と高校生出張ホストの、ふしだらな熱愛を描くラブコメディーなマンガ、一条ゆかりさんの『正しい恋愛のススメ』。
コミックス版では全5巻ですけど。実は、本編は4巻で完結。最終5巻は、中篇のサイド・ストーリー4本と、「正しい~」とは関連しない短編1本(扉込みで8頁)が採録された作品集になってます。
「ビジネス編」と銘打たれた5巻では、2人の高校生ホスト博明と、護国寺のそれぞれがメインをはる短編が2本ずつ、交互に読めます。
いずれも、出張ホストのバイトの話。だから「ビジネス編」ね。
玲子さん(岬玲子)は登場しないので、「ビジネス編」は、実は「イケてる中年熟女と高校生出張ホストの、ふしだらな熱愛を描くラブコメディー」じゃぁないですね。
「恋愛や愛情関係で煮詰まったおんなたちをサポートする、小粋な高校生ホスト」の話、かな(?)。
お話には、作り話めいたとこは目立つけど、それはコメディーだから構わないと思うな、アタシ(紹介者)は。ちょっと小粋な感じは、一条マンガらしいと思います。
コミック版第5巻の内容は、集英社文庫版だと、3巻の終盤に採録。ただ、文庫版の方には、8頁の短編の採録はありません。
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(『正しい恋愛のススメ』ヤングユーコミックス版、5巻、書影)
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(『正しい恋愛のススメ』集英社文庫版、3巻、書影)
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「ビジネス編」最初のエピソード「人妻」は、博明が出張ホストのバイトを始めた頃の話。
マナー習得の一環として、ワインの講習会を受講した時の出来事が描かれてるから。本編で言うと、コミック版1巻の中盤で省略されてた形のサイド・ストーリーになる。
博明と同じ講習会に出てる若妻は、出張ばかりしてる夫に浮気を繰り返されてて。大阪の浮気相手からは、子供が出来たから別れてくれ、って電話を受けてる。
子供を産めない体質になってるので、じっと耐えてる様子だけど。誕生日の晩に1人でうじうじ泣いてる様子に、女ともだちが呆れちゃう。
この若妻の女ともだちってのが、本編にもチラ出してる女で、宝飾店「ジュエリー・マダム・YURI」のオーナー。彼女は、護国寺の顧客なんだけど、たまたまレンタルしてた博明を「誕生日プレゼント」だって言って、友人に回す。(多分、護国寺が、博明をホスト業に慣れさせようとして、お願いしたんだと思うな)
で、エスコート相手を変えるって依頼を受けた博明が、会ってみたら、顔見知りだったので、びっくりするわ、どぎまぎするわ、ってお話。
いきなり、修羅場に立ち会う博明!! とかが山場でしょうけれど。アタシは、エピローグにあたるパートの洒落た感じが、一条マンガらしくて好き♪
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2本めのエピソード「不倫する女」は、「ジュエリー・マダム・YURI」でオーナーを待ってる護国寺が、店のチーフをやってる伊藤さんにレンタルされる話。
時期はよくわかんないけど、博明がもうホストのバイトを始めた後。
多分、秋口か晩夏かな(?)。レンタルされて、恋人のふりをしながら出かける先が高原の別荘って感じのとこだし。東京の事務所でもお鍋を食べてるカットがあるし。
伊藤チーフは、短大出て8年、って話だから、三十路がひしひし迫ってるお年頃。
友人のだんなと不倫してて、友人の方から別荘に誘われたのを断るのも変だし、3人で過ごすのも気詰まりだし、ってわけで、護国寺を偽装恋人に仕立てるけれど。って話。
このエピソードは、女の逞しさしたたかさに護国寺も腰がひける様子が、本編ではちょっと観られない感じで、おかしいです(笑)。
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3本めの「死にたい女」は、ホスト業にも大分慣れた感じの博明の話。
待ち合わせ場所で会った博明に「あの…私…出張ホストさんお願いしたんですけど…/お使いの方?」と訊く相手は、アニメ声で一見高校生にみえる(笑)。
「ひどいなあ…こう見えても一応 大学生」と、営業上サバを読む博明が、「まさか…高校生じゃないよね」と訊きかえすと「私 22です/社会人よ」と、ぷんぷんって感じ(笑)。
自殺する前に、素敵なムードでロストバージンしたい、って依頼をきいて、あたふたする博明。事務所の所長に電話で相談しても「やあねえ大丈夫よお/死ぬ死ぬって言う奴が死んだためしなんかないんだから」とか言われちゃう。
彼女の話を聞いてみれば、彼女が別れた婚約相手は、可愛い彼女に手を出さないくせに、性風俗に通ってた(苦笑)。それを知って、頭にきて別れたし、自殺してやるーっ! ってお話。
このエピソードは、可愛らしい話で、アタシは好き。少女マンガらしさが1番色濃いように感じます。
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4本めの「売る男・買う女」は、ぐっと趣向を変えて、護国寺がホスト業を始める頃の物語。
本編の方では、玲子さんと博明のふしだらな熱愛の方がメインになって、護国寺くんのクラシックな純愛の方は、サブに回ったと思うんですけど。
「売る男・買う女」では、恋人の入院費をひねり出すために、レンタル・ホストのバイトをはじめた護国寺と、彼の最初の仕事の様子が描かれます。そして、護国寺最初の仕事に物語は続いてく。
このエピソード、全体が護国寺の回想って構成になってて。オーラスで、「最初の仕事」のことを思い出してる護国寺は、本編の冒頭時点の護国寺。
営業中のとこを、渋谷のホコ天でぶらついてた博明と美穂ちゃん(小泉美穂)に目撃されるって、1巻冒頭のシーンに繋がる。
この時、護国寺をレンタルしてた相手が、「ジュエリー・マダム・YURI」のオーナーって仕掛け。
このマダムYURIって女キャラ、本編では、冒頭の渋谷ホコテンのシーンにチラ出してるだけだけど。「ビジネス編」では、最初のエピソードで、若い人妻にレンタルしてた博明をプレゼントしたり。狂言回しまでは行ってないけど、近い感じの立ち居位置で、連作のあちこちに顔をみせてる。
ちょっと気になる存在感のあるキャラと思います。残念なことに、「ビジネス編」では、バイプレイヤーに徹してますけど。
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コミックス版5巻採録の「ビジネス編」は、1本ずつは、良くも悪くも、コミカル調で軽い楽しさ。
連作4本を通して読むと、マンガ家、一条ゆかりの達者さを味わえる。
アタシは、「ビジネス編」は、本編と併せて読むのがいいと思うな。
例えば、3本めの「死にたい女」は、大きくなった少女マンガファン向けの、少女マンガらしい話。簡単に言っちゃえば、大人向けの少女マンガね♪
本編の方に、少女マンガらしさとかが無いわけじゃぁないのよ。ただ、本編では、うすーく引き伸ばしてあって、全体に練り込まれてる感じで、目立たない。じっくり味わうと、じわーっと湧いてくるふうなんだけど。
「死にたい女」を、本編のつけ合わせ的に読むと、本編の方の隠し味も引き立つ感じ。
「ビジネス編」の中篇4本は、それぞれが、本編にブレンドされてる味わいを引き立てる。そんなふうだから、本編の付け合わせ的に読むと楽しいです。
最後の「売る女・買う女」なんかは、護国寺もいろいろあって、本編の護国寺になってるのが納得感あって、そこがいい。
そんな中篇連作が『正しい恋愛のススメ』「ビジネス編」です。
「正しい恋愛のススメ」ってタイトルだけど、恋愛の形には正解はないって感じがして楽しいです。
形に正解はないけれど、選択や、心意気みたいなとこには、不正解はあるのよね。強いて言うならそんな感じのバラエティが、4本だけの連作でも素描されてて。そこが楽しい♪
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書誌情報:
一条ゆかり,『正しい恋愛のススメ』3(集英社文庫),集英社,Tokyo,2005.
ISBN 4-08-618289-0
一条ゆかり,『正しい恋愛のススメ』5(ヤングユーコミックス),集英社,Tokyo,1998.
ISBN 4-08-864407-3
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