『機動戦士ガンダムAGE』のSFネタ解説その1:UEの正体を追え

 機動戦士ガンダムAGEに出てくるギミックや台詞を元に妄想をたくましくしていくSFネタ解説シリーズの1回目。

 第1回は、謎の敵UE(UnknownEnemy=アンノウンエネミー)の正体についてである。もちろん、情報が不足している(1~3話までを視聴)現在、正解などたどりつけようはずもない。真面目七分に法螺三分、大嘘ついても小嘘はつくなの三割精神でいく。最後までおつきあいいただければ、幸いである。

 さて、UEの正体であるが、今のところ作品世界では1話にフリットの友人が言うように「異星人」説が有力っぽいようだ。というわけで、「異星人」説から分析してみよう。
 UEが「異星人」である場合、その目的は何だろう?
 連邦を倒し、帝国主義的な、領土(星)を増やし資源や人、市場を獲得する目的ではなさそうである。UEの動きには、そうした政治的・経済的な動きが見られない。
 かといって、人類を滅亡させようというのでもなさそうだ。コロニー襲撃にしても、最初からコロニーを外から攻撃した方が、確実というものである。むしろ、UEの一見すると行き当たりばったりの動きからは、彼らが人類の生死に興味がないようにすら見える。コロニーから脱出する人々を牽引する宇宙戦艦ディーヴァに対し、結局何もせずに通り過ぎたように。
 「異星人」説が良いのは、UEが人類とはかけ離れた感性や価値観を持つ存在であれば、UEの不明瞭な行動に説明がつく(説明がつかないことに理由がつく)点だ。
 たとえば、『未来の二つの顔』(ジェイムズ・P・ホーガン)では、コンピュータが進化した知性が、個体としての人類という存在を認識できずに、人類に害を及ばすことが書かれている。また、人類が認識できていても『時の果てのフェブラリー』(山本弘)のように、相手の行動原理が分からず甚大なトラブルが発生するパターンも考えられる。
 侵略である場合でも、『へびつかい座ホットライン』(ジョン・ヴァーリイ)の鯨を助けるために人類文明を滅ぼした異星人のように、価値観と能力の双方が違いすぎることで、コミュニケーション不可なことがある。たとえるならば、子供が蟻の巣を潰すようなものだ。潰される蟻からしてみれば、子供が何を求めて自分たちを滅ぼそうとするのか、さっぱり分からないだろう。子供の持つ残酷さと好奇心の混じった行動は、蟻の知性では把握すら不可能なものだ。
 こうした異なる知性とのコンタクトにおける齟齬というのは、SFではファースト・コンタクト物として扱われている。『宇宙のランデブー』(アーサー・C・クラーク)の謎めいたラーマ人のように、結局最後まで、相手が何をしたいのかよくわからん、という作品もある。

 逆に、UEに分かりやすい目的がある、としたらどうだろうか?
 こういう時には、ガンダムAGEの結末を仮定し、そこから逆算していけば良い。
 たとえばガンダムAGEがAGEシステム=進化するガンダム、という大前提である以上、敵も同質の存在で、人類=アスノ家のAGEシステムと、UEのAGEシステムの最終決戦がクライマックスに来る、という仮定をしてみる。
 これだと、人類とUEにAGEシステムを与えた存在が裏で糸を引いていることになる。『レンズマン』(エドワード・E・スミス)よろしく、人類側にアリシア人、UE側にエッドール人がいて、両者の代理戦争を人類とUEはさせられているわけだ。これだと、裏にいる存在の目的はアスノ家(そして今の当主であるフリット)のAGEシステムを鍛えることとなる。今のままでは、UEのAGEシステムの方が圧倒的に強くて勝負にならないからだ。
 ひょっとしたら、『超獣機神ダンクーガBURN』(長谷川裕一)のように、UEはAGEシステムを使った存在ではなく、ただの当て馬、という可能性もある。AGEシステムでガンダムを進化させるためならば、人類やUEにどれだけ被害が出ようがかまわない、という邪悪な存在がいるのならば、最後の敵はまさにこの裏に潜む存在となるだろう。
 だが、実際にその最後の敵に出会ってみたら、本当に『最後の敵』(山田正紀)だったエンドもあり得るのがこのパターンの怖いところだ。

 AGEシステム(とガンダム)のさらなる進化こそがUE(とその裏にいる存在)の目的、という想定であれば、UEが異星人である必要はない。
 ループ物や時間SFネタが、ドラえもんをはじめ、シュタインズゲートまどかマギカなどのアニメで広く知られるようになった今、UEは未来人が送り出した人類進化を促すための仕掛け、という説も十分に考えられる。未来からの過去への介入は、歴史を改変するため未来人の存在を危うくするが、『時砂の王』(小川一水)的な危機に未来があるとすれば、過去改変の危険は看過せざるを得ないだろう。

 異星人や未来人ではなく、フリットたちとは道を違えた人類、というパターンもある。アスノ家に救世主としてのガンダムの伝説が伝わるが詳細が不明なように、あの世界では科学技術や科学的、論理的思考が必ずしも重んじられていない様子が見受けられる。ひょっとしたら、『バトルテック』での星間連盟崩壊のような大惨事が過去にあり、科学技術が過去よりも劣っている、あるいは『デューン砂の惑星』(フランク・ハーバート)のようにいくつかの技術が封印されている世界かも知れない。
 UEが過去に地球圏から脱出した科学主義者が戻って来た、あるいは『宇宙空母ギャラクティカ』よろしく行った先でもひどいめにあって逃げて来た、パターンの良いところは、ある程度話が進めば、人間の敵を出せる点にある。1~3話のUEは、ドラマで扱うには、やはりめんどくさい。何を考えているのか分からない恐怖というのはあるが、恐怖を煽る演出が少ない(1話でシャッターの下からのぞきこんでくるのは怖かった)ので、そういう狙いがあるわけでもなさそうだ。何より、UEが未来人か分離先から帰還した地球人であれば、ユリンがUE側の姫君か、過去改変のために送り込まれたエージェントという説も使えて、妄想のネタが広がる。

 そうだ――
 14年前の天使の落日の惨劇も、7年前のオーヴァーン・コロニーの襲撃のすべてが、ただのきっかけに過ぎず。それどころか、ガンダムやAGEシステムの進化すら、どうでもよく――
 ただ、ひたすら。ユリンとフリット(あるいはその息子か孫)とを結ばせて、その時空には存在しなかった血統を生み出すことだけを目的としていたという――

 『征東都督府』(光瀬龍)のような展開も、考えられるのだ。

※2011.12.14 コメントの指摘を受けて、最後の作品タイトルを『所は何処、水師営』から『征東都督府』に修正

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最後の部分のネタの

最後の部分のネタの光瀬龍作品は『水師営』ではなく『征東都督府』ですよ

ガンダムAGEの本放送は未見なのですが、自分なりに思った事を。

オレは「UE=バーサーカー説」を採らせて戴きますよ。

序でにガンダムAGEはちゃんと三世代と主人公三人の姿を描写できるんだろうか、という不安も。
放映期間が一年間だとしたら、そういう要素をそれだけの時間と話数で描き切るというのはツラそうな気もするので……

おお、確かに>征東都督府

ありがとうございました。さっそく修正いたします。


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