『銀星みつあみ航海記00 俺らが出帆した動機』鷹見一幸 銀星号の構造図

■本日の読書:『銀星みつあみ航海記00 俺らが出帆した動機』鷹見一幸

 でたまかにつながるスペースオペラシリーズの2冊目であるが、時系列的にはこちらが先である。

 このシリーズの影の主役ともいうべき存在が、輸送船銀星号である。
 N級コンテナ貨物船で、記述によると

 正面から見ると十文字型をしているブリッジの後方から一本の長いパイプのような船体が伸び、そのパイプからは等間隔にコンテナを係留する細いビームが何本も伸びている。
 そしてパイプの一番後方にヒレのような大きなパネルがついたジェネレーターが繋がっている様は、まるで巨大な骨格標本のようなものだ。
『銀星みつあみ航海記00』(p136~137)

 ここまで読んだ私の脳裏に浮かんだのが、あさりよしとおさんのデビュー漫画、『木星ピケットライン』のホネバカリーという宇宙船である。
 『2001年宇宙の旅』のディスカバリーと同じ構造を、あそこまで愉快な造形にした漫画に、我が友人は大喜びで雑誌からその話を切り取って友人の誰彼ともなく見せてまわったものである。

 閑話休題。
 とりあえず、模式的にどんな構造かパワーポイントでちゃちゃっと描いてみよう。
ginsei_gou.gif
 サイズについては現在までの記述では不明な部分が多い。

 宇宙船のサイズを表す単位として、私が好むのはやはり質量系だ。キログラムとかトンとかである。なぜ好むかというと、ロケットの推力や推進剤の噴射速度など、宇宙船の航行性能に関する数字との相性が良いらである。計算するのにいちいち単位を変えなくていい。
 だから私がデザインした『スターレジェンド』でも宇宙船は質量単位である。

 が、宇宙船の“フネ”の部分に着目すると質量トンはあまり一般的ではない。特に商船はそうだ。

 海洋の戦艦などで使う単位、“排水”トンは、こちらは重量としてのトンに近い。いわゆるアルキメデスでエウレカな感じ。風呂に戦艦を浮かべ、あふれ出る(排水)水の重量が戦艦の重量となる。
 戦艦の重量とはすなわち、その艦の持つ大砲や装甲の重さであり、重いほど強いのだ。だから軍縮条約でも重量がベースになったのである。

 しかし、商船での重量は本来あまり機能と関係ない。
 商船の機能で重要なのは、どれだけの積み荷を運べるかだ。だから、商船は積み荷を運べる容積を元にトン数を算出する容積トンを使っている。

 むかしの日本でも、『千石船』などの呼称は容積トン由来である。『石』とはお米の単位だ。千石船というのはお米を千石=1万斗=100万合=18万リットル運べる船、というわけだ。洋の東西を問わず、船倉の容積が船の大きさの単位となっていたわけである。

 この流れを受けて、スペオペRPGの元祖とでもいうべき『トラベラー』ではトン数単位であるが、容積トン、それも“排水素”トンが使われている。なぜこの単位を使うかというと、トラベラー世界では燃料が液体水素だからである。

 もちろん“排水素”トンという単位は架空の単位である。
 “排水素”トンは、1トン=約13.5立方メートルで計算される。液体水素はえらく比重が軽いのだ。
 商船で一般的な総トン数というのが100立方フィートで約2.8立方メートルであるから、5倍近い。
 トラベラー世界でハヤト達のようにPCの持ち船になるA型自由貿易船が200排水素トン。小さく思えるが実は1000総トンほどの、そこそこ大きな商船だということがわかる。
 ただ、こちらを手に入れるには40年ローンという長期ローンが必要になる。これだけ分割しても宇宙船というのは高いもので、日本円で1000万円をこえる月々の返済がとどこおり、無重力なのにクビを吊ろうという船長兼船主のPCが大勢いたものである。

 銀星世界においても、宇宙船の多くは一発現金払いではなくローンでの支払いになるだろう。企業だって、ナニもかも一発決済するわけではない。特に大口の仕事とかになると入金されるのが期末や年度末なので、一括して金を払うにしてもそれまで先送りになるはずだ。

 だから実を言うと私は、銀星号を格安で売ったハインツさんは、額面ほどには損をしていないと考えている。分割され、あるいは年度末などの未来に支払われる20億と、すぐさま銀行に入る17億では重みや使いでが違う。きっと月々の資金繰りを担当している経理のヒト(奥さんか?)は大喜びしたのではあるまいか。

 さてさて、こうして船出をした銀星号であるが、経済的な側面をみるとけっこう難題が山盛りなのである……(次号の読書日記に続く)

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