『涼宮ハルヒの分裂』谷川流 枝分かれした並行世界の、もうひとりのハルヒ

■本日の読書:『涼宮ハルヒの分裂谷川流

 「宇宙人か未来人、超能力者か異世界人がいたら私のところに来なさい!」

 などとハルヒがのたもうて作中で一年が経過した。
 宇宙人はいたし、未来人もやってきている。そして超能力者もまあ、限定型であるが存在する。
 いない(あるいは作中で確定されていない)のは異世界人だけだ。

 さて、ここで質問だ。 異世界人、あるいは異世界ってなんだろう?

 漫画やアニメではよく主人公が異世界に転移する。あるいは異世界からヒロインなどが転移してくる。おとついに読んだ『ゼロの使い魔』などもその一例だろう。
 こうした作品の異世界は完全に我々の宇宙とは別の存在である。アメリカのRPG『TORG』のごとく、世界法則からして異なる場合も珍しくはない。魔法が使えたりするのはその一例だ。
 ハルヒが呼び込む異世界人というのが、そんな異世界である可能性はむろんあった。

 が、SFやアニメなどにはそれとは別の形で異世界が存在する例がある。
 並行世界――我々の世界とよく似ていながら、どこか微妙にズレている世界がそれだ。

 試しにコインを投げてみて欲しい。
 コインの表が出たろうか? 裏が出たろうか?
 確率はフィフティ、フィフティだ。
 『この世界のあなた』のコインで表面が出たならば、『あちらの世界のあなた』のコインは裏面が出ている。
 確率的には小さいものの、『飛んできたカラスが空中でくわえて飛び去ってしまった世界のあなた』だって存在しているかも知れない。

 並行世界はそうやって誕生する。
 あなたは今、コインを投げたことでひとつの世界を創造したのだ。

 さて、『涼宮ハルヒの分裂』ではもうひとりの、ありえたかもしれないハルヒが登場する。そちらのハルヒにも、未来人や宇宙人、超能力者がやってきている。

 やじろべえの両端にふたりのハルヒ(+未来人、宇宙人、超能力者)。
 そしてやじろべえの支点を支える指の役目をしているのが、キョンだ。

 ぐらぐらとやじろべえは不安定きわまりない。ハルヒの力は文字通りの意味で世界を揺るがす。ひとつの世界にふたりのハルヒは必要ない。

 この世界を揺るがした4年前の情報爆発は、ふたつの並行世界を誕生させたのかもしれない。ハルヒの世界と、もうひとりの世界を。

 並行世界にはルールがある。別れた世界は進化の枝分かれよろしく元には戻らないというルールだ。さらに分裂して増えることはあれども、ひとつになることは決してない。

 けれど忘れるなかれ。
 ルールをねじ曲げることができる人間が、ひとりだけいる。
 涼宮ハルヒ、その人だ。

 「宇宙人か未来人、超能力者か異世界人がいたら私のところに来なさい!」

 それが彼女の望み。彼女は異世界人と出会うことを望んだ。
 枝分かれした別の世界と交わることを望んだ。
 だからハルヒは出会ったのだ。

 もうひとつの世界に存在する、もうひとりの自分と。

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