『機動戦士ガンダム一年戦争全史 下』歴史群像のライター陣がガンダムを熱く語る

■本日の読書:『一年戦争全史 下』

 歴史群像でおなじみのライターさんたちがガンダム一年戦争を戦略や戦術面で熱く語った良書。

 下巻は主に戦争の終盤、テレビシリーズとほぼ同期する感じである。

 上下巻通して、オフィシャルな設定にかなり配慮しているように見受けられる。たとえば地球連邦政府については『ムーンクライシス』(松浦まさふみ)っぽいオレ展開/オレ設定が出るのではないかとも思っていたのだが、そういうのはまったくなしである。

 さすがに、サイバーコミック時代のようなわけにはいかんようだ。『実録ぢおん体育大学』(安永航一郎)とか大好きだったんだがなぁ……

 それでも政略・戦略面はともかく、戦術面ではまだ比較的自由に設定が許されるようで、本書でも特に林穣治さんによる

 考察6【物理と戦術】宇宙における戦闘
 Column.宇宙要塞の意義

 このふたつはしっくりと納得しやすく、また読み応えもあった。むろん、あくまでガンダム世界をそれっぽく描写しているわけで、実際に数字を出してしまえば破綻してしまうのだろうが、そこはそれ、こういうのはうまくごまかすのも大事である。

 また、ニュータイプ理論についてはやはり林穣治さんの

 Column.ニュータイプとフラナガン機関

 において、ニュータイプ理論について社会的ダーヴィニズムとばっさり切って捨てているところが面白い。いや、まじめに考察すればどこもおかしな事は書いていないのだが、他の政略戦略面がアニメ設定に配慮している分だけ痛快な感じである。

 それにしても本書であらためて地球連邦と連邦軍というものの関係の曖昧さ、不可思議さがはっきりしてきている。

 たとえば、アメリカやロシア、中国などが国軍を“地球連邦”なる組織に移譲するまでの過程にどのような政治的なドラマが繰り広げられるか考えてみるだけでも面白い。

 本書を読んでみて、私は“地球連邦”なる組織は実は各国の軍隊内部にいた秘密結社によるクーデターで誕生したのではないかと考えている。世界各国の政府は、その秘密結社によって動いた自国の軍隊によって制圧され、否応なく主権を返上させられたのではないかと。
 だから本来、“地球連邦”とは“地球連邦軍”による軍部独裁政治で、その圧倒的な武力によって人類は強制的に宇宙へと移民させられたのではなかろうか。

 本当はさらに、クーデター発生直前、人類は地球環境の汚染などによって、9割の人間が遺伝情報を破壊されて破滅寸前に追い込まれたとか、宇宙移民=スペースノイドというのは実は人類復活のため遺伝情報から合成されたアンドロイドのような存在であるとか、いろいろSF的設定を考えてみると面白そうなのであるが、ここまでいくともうガンダムでもなんでもないのでやめておこう。

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