奥瀬サキ(原作)、目黒三吉(漫画)『低俗霊DAYDREAM』1,「口寄せ屋」は楽じゃない、らしい

低俗霊DAYDREAM』は、2007年5月現在、単行本が9巻まで刊行されているマンガ作品(「月刊 少年エース」に連載)。原作、奥瀬サキさん、漫画は、目黒三吉さん。

 サイコ・サスペンスと、怪談風ジャパニーズ・ホラーとをハイ・ブリッドしたような物語。
 主人公、崔樹深小姫は、作中「口寄せ屋」と呼ばれる、霊媒タイプの霊能者。
 1巻には、主人公の「口寄せ屋」稼業の、典型と思えるケースが描かれた短編、「首吊りマンション」と、後に長いプロットの物語の内で、重要な役回りを得ることになる脇役が登場する中篇、「くまのポー」とが採録されてる。
Cover image

 1巻のカバー袖に記されてる文章を、丸ごと引用させてもらいます。多分、奥瀬サキさんによる文章なんでしょうけど、なぜか、署名が見当たりません。(あるいは、目黒三吉さんとの連名と、示唆されてるのかもしれません?)

 この世界には二つの見方があります。生者と死者の「目」です。稀にこの二つの世界を自由に行き来できる者がいます。
 その内の一人の小娘が崔樹深小姫です。
 彼女は私たちの知らない、もう一つの世界を「目」で見て「口」で伝えてくれます。
 そんな彼女のような者を、人々は口寄せ屋(くちよせや)と呼びます。

「もう一つの世界を『目』で見て『口』で伝えてくれます」と言われてるように、深小姫は、幻視能力が鋭敏であるようだ。
「『口』で伝えてくれます」は、「口寄せ」本来の意味である、憑霊状態での異言、つまり、霊を降ろした状態で、霊の言葉を普通人に聞かせる霊能を指すのでしょう。
(もちろん、どちらの説明も、直接の意味以上の含みを孕んでますけど)

「稀にこの二つの世界を自由に行き来できる者がいます」は、おそらく、「口寄せ屋」を含んだ異能者(霊能者)全般を示唆してる言葉でしょう。
 ただ、崔樹深小姫に関して言えば、2つの世界を、文字通り自由に行き来できるわけでは決してない。
 意識的に幻視(霊視)を凝らす事や、本来の「口寄せ」が指す憑霊現象は、かなりコントロールできるみたい。けど、意識しないで、幻視に見舞われることもある。幻視の内に、生者の世界ならざる世界に引き込まれそうになることもあるらしい。
 また、作品を読むと、崔樹深小姫は、伝統宗教が説くような、「死後の世界」についてのビジョンは、明確には持っていないのではないか、と思える。

「遅くない……か/
 ウソばっか/
 死んじゃったら/元も子もないじゃん」

 上の引用は、1巻採録の「首吊りマンション」で、一仕事終えた直後の主人公が漏らす独り言。
 1つ前の見開きで、イヂメをきっかけに自殺した少年の霊に向かって、「行って」「行って その目で/世界を確かめて」「大丈夫」「今からでも/遅くないよ」と語りかけた、その直後の独り言。
 鋭敏な幻視能力故に、霊的存在と対峙していく深小姫だけど、深い部分での戸惑いの印象がある。彼女の戸惑いは、「首吊りマンション」の時点では、感傷的とも言えるけれど。自己憐憫にはなってない。
 自ら戸惑いを断ち切るように、決断をする深小姫はカッコイイんだけど。そうした勇姿を見られるのは、2巻以降の物語でだ(残念っ)。

「一人の小娘が崔樹深小姫です」
 深小姫は、ちょくちょく、東京都庁生活対策課なる部署からの依頼で、霊障と呼ばれるタイプのトラブルの「対策」を、内々に処理。見たとこ、外注スタッフ扱いらしい。(明確な言及は3巻に見られる)
「口寄せ屋」としての「対策」を依頼してくる東京都庁生活対策課の課長は、深小姫の実父。
 ただし、親子関係はかなり噛みあわないものがあるみたいで。父娘が直接会う場面は、むしろ稀。
 その事も関わってるかもしれないけど、東京の荻窪界隈で1人暮しをしているっぽい深小姫は、未成年らしい(明確な言及は、やはり3巻に見られる)。

 ちなみに、1回のギャラは高額だけど、不定期収入の「口寄せ屋」稼業だけでは生活が苦しいらしい。
 六本木に事務所を置くSM風俗で、女王様のアルバイトもやってる。名刺には「ミサキ女王様」と記されてるようだ。源氏名を使わないとこは、バイトっぽいわねー(ほんとか?)。

「六本木/ミュルミュール/ミサキ女王様…/
 『女王様』?」
「はい/
 私/一身上の/都合により/
 口寄せ屋と/S女王の/二足の草鞋を/
 履いております」
「はははははは/そりゃいいや」
「女王様が/ムチふって/オバケ退治ってか/ははははは」
(…深小姫さん)
(渡さなきゃ/よかった)

 上の引用は、1巻採録の「くまのポー」で、深小姫と、彼女の「対策」をサポートする柧武惣一郎とが、暴力団の組を訪れたシーンでのやりとり。
 2人は、ある“霊障”の原因、真相を知ってるだろう人物の行方を追って、横浜にある暴力団の事務所を訪れたのだった。
 組長は、惣一郎が差し出した「東京都庁 生活対策課」の名刺を見て言う。
「そっちの/マブイ/お姉ちゃんは/口寄せ屋?」
 倒産整理の不動産処理でちょっと、と、口寄せ屋の存在を知ったとほのめかす。
 このやりとりに続くのが「女王様がムチふって」云々のやりとりなんだけど。
 さり気に渋いわよね。

 1巻の他のシーンでも、不動産業者など、一部関係者の間では、生活対策課の「口寄せ屋」の存在は、内々には知られてるらしい雰囲気が、うまく描写されてる。
 公的な書類に「口寄せ屋」とか「御祓い料」とか記されてるかは定かでないけど。多分、そんなふうには記されてないだろうな、って想像させる描写。例えば「生活対策コンサルタント料」とか記入されてるんじゃぁないかしら?
 要するに、公的には、限りなく存在しないに等しい扱いの稼業が「口寄せ屋」なんだと思える。
 それやこれやで、暴力団組長に、面と向かって笑われたり。奇妙な親近感を示されたり。「口寄せ屋」稼業も辛いわね、って感じ。肩身の狭い感じが、渋いと思います。

 バイトとは言え、女王様もやってる深小姫は、肩身が狭くたって、胸はってるけどね。
 そこもいい☆

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 ちなみに、アタシ(紹介者)の評価では、「首吊りマンション」は、全編の導入編。「くまのポー」は、ちょっとハードな物語だけど、まだまだブッチギリの加速は見せてない。どっちのエピソードも面白いけど。

 サイコ・サスペンスと、怪談風ジャパニーズ・ホラーとをハイ・ブリッドしたような『低俗霊DAYDREAM』の本領は、アタシに言わせれば、ピリピリするような毒の味、なのだ
 1巻では、まだまだ、マイルドですけど。薄口でも毒の味は、あちこちに埋め込まれてる☆

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『低俗霊DAYDREAM』1巻採録分は、雑誌「月刊 少年エース」(角川書店)の、2000年8月号~2001年2月号に掲載された分、との事。

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書誌情報:
奥瀬 サキ 原作、目黒 三吉 漫画,『低俗霊DAYDREA』1(角川コミックス・エース),角川書店,Tokyo,2001.
ISBN 4-04-713398-1

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『低俗霊DAYDREAM』は、サイコ・サスペンスと、怪談風ジャパニーズ・ホラーとをハイ・ブリッドしたような物語。
 2007年5月現在「月刊 少年エース」に連載中のマンガ作品で、単行本が9


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