一条ゆかり、著、『プライド』6,離れて思う心情の響きあい
ベテラン・マンガ家、一条ゆかりさんの最新作『プライド』。
オペラ歌手の一流を目指す美女2人の、ライバル関係を主軸に展開されるラブ&バトル☆
6巻では、各国に散った、史緒、蘭(蘭丸)、萌、それぞれの修行が進む。
ハイ・レベルにチャレンジするキャラたち。ラブ&バトルの行くえは、どうなる??

2007年5月現在、雑誌「コーラス」に連載中の『プライド』。6巻には、2006年1月号~5月号、7月号の掲載分が採録されている、とのこと。
なお、この記事では、『プライド』6巻の内容について、不必要なネタバレは避けながら、読みどころをご紹介してみます。
ただ、5巻までの内容は、必要に応じて、随時言及しますので、ご了解あれ。
用語:プライドから、色々レヴュー記事もたぐれますので。よければ、どうぞ。
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オペラ歌手の一流を目指す、史緒と萌。そしてピアニストの一流を目指す、蘭丸。
ユニットS.R.M.の空中分解の後、3人は世界各国に散って行った。
6巻では、3人ぞれぞれの、音楽修行が描かれてゆきます。
恋愛関係は、離れて思う心が描写されてて。
だいたい、『プライド』って、いくつものサブ・プロットが、複雑怪奇に絡まりあいながら、ギチギチ締めあがってくみたいな緊張感がいいんだけど。
6巻では、何しろ、主要キャラが各国に散ってるから。6巻は、5巻までと比べると、比較的淡々と読めます。
でも、それが、離れて思う心情の描写とマッチしてて、いい感じ。
もっとも、ちゃんと、暴れる萌とか、悩む史緒とか、苛められる蘭丸(笑)とか、ありますし。
終盤には、史緒、神野、蘭丸のウィーンでの再会ってシーンもあります。
「ピアノって」
「こうやって/弾くんだ…」
「YES」
「知らなかった/俺…」
「自分が思って/いたより/もっともっと/
ピアノが/好きなんだ」
“女王様”ベティの内弟子扱いになった蘭丸が、ピアノに触ってはいけない、と命令されて2週間以上が過ぎた頃。「ピアノを/弾かせて/下さい!!」と、土下座して頼み込んで、弾かせてもらった時のセリフ。
ベティは、演奏以外は、ともかく乱暴な女だけど。女にゆるくて、ウケっぽいとこのある蘭丸には、いい師匠なのかもしれない? ボケと突っ込みならぬ、ユルい男と、乱暴女(笑)。
ピアノを解禁された後、蘭丸は、ベティから“INVOCATION(祈り)”を、ツイン・ピアノ用にアレンジするよう命じられる。
一旦譜面を書いたけど、「私のテクと勝負する気で作りなさいよ」とボツを喰らう蘭丸。編曲の作業に苦しんだ果てに、「そうか…」と思う。S.R.M.のデュエットで言えば、自分が萌のパートなんだ、と腑に落ちる。
この関連のプロットは、「プライド」ってテーマの一変奏と思って読むと、なんだか微妙で面白い。
史緒は、師匠のルディから、少年役に挑戦するよう命じられる。「ばらの騎士」(リヒャルト・シュトラウス)のオクタヴィアン役だ。
「歌う楽しみは/知ってるのに/演じる楽しみは/知らないんだな」
「それじゃあ/オペラは/無理だ」
ゲイと設定されてるルディは、茶目っ気充分のキャラだけど、弟子には厳しい。
これまで、『プライド』の物語内には、ちょっと出てきてないタイプ。
強いて言えば、「プリマドンナ」の奈都子ママが近いけど。奈都子ママは、主に、店の雇用者として史緒に接してた。
オクタヴィアンを演じようとするする史緒に、ルディは「話に/ならない」「どこからどう/聞いても女/そのものだな」と言う。史緒は、「何を歌っても/同じなのは/自分を出しすぎる/からですか?/個性は/いらないんですか?」と問う。
なんてゆーか、……話が噛みあってない。
何かあると、考え込んでしまう“不思議ちゃん”キャラ健在だ(笑)。
「プリマドンナ」で、歌う喜びを理解した史緒は、ウィーンでは、演じる喜びに挑戦することになるのだった。
萌は、イタリア語と、基礎中の基礎、発声を嫌と言うほどやらされる。
音楽学校の校長が、学校の宣伝のため、と萌のレッスンを増やし、コンクールに出場させるよう、担当教官に指示をしたのだ。
じ・つ・は、ちゃんと裏があって。
萌は、恐妻家で有名な校長が、学校の伴奏指揮者と浮気していることを偶然知って。それをネタに校長を強請ったのだ。ダーティー・キャラ、ますます爆走(笑)。
6巻の内容は、これまでの内で比較的に静かと思う。波乱はあるんだけど、キャラが分散してるので、どうしても小さな波乱がたくさん、て印象になる。
読めば、1人1人のキャラにとっては、重大な出来事と受け止めることはできるはずだけど。サブ・プロットの直接的な絡みが少ないので、どうしても、これまでよりは、小さな波乱て印象になる。
花火で言ったら、大玉ドッカーンでなくて、綺麗な中玉の連発、パパパパパパパァーンって感じね。分量的に長いし、内容的にも複雑な物語だから。こういう幕も楽しい。
それに、絡みの少ないサブ・プロットの間で、響きあうエピソードの描写は光ってる。こういうとこの細かな描写が、やっぱりベテランは違う☆
「響きあうエピソード」って一言で言ってもいろいろあるけど。
目立つのはやっぱり、空中分解してしまったS.R.M.の体験だと思う。史緒や蘭丸は、S.R.M.の体験があったからこそ、頑張る事も、先に進む事もできる。そんなエピソードが気持ちいい。
これも「離れて思う心情」だ。
萌は……、「史緒さんが/何をしてようが/どうでもいい」と思っていた。けれど、「人と比べて幸せを感じるタイプ」と奈都子ママに評された(4巻)彼女は、追いつめられていく。
2巻で、史緒が追いつめられていったのと、似てる面もあると思う。
4巻で、奈都子ママに言われた言葉、例えば「人と比べても/ちょっと気分は/いいけどたいして/幸せには/なれないのよ」や、「人とばかり/戦ってると/つぶれるわよ」を思い出せないのは、萌の不幸と言っていいものかしら? この辺も微妙なとこだ。
ともあれ、S.R.M.で奇跡のようなセッションを体験をして、さらに世界に散って、高いレベルでの修行をはじめた3人が、レベルはあがっても、一見、前と同じようにも思える事を繰り返してるのが、面白い。
つまり、性格的なものは、ほとんど変わってないのだ。
当たり前だ、めったなことで変わらないから性格なんだし。
にも関わらず、それぞれのキャラに出来る事は、ヂリヂリと増えていく。
世界と言うか、それぞれの視野も広がってる。(萌はちょっと辛いけど)
大体、ベティにしろ、ベティほどではないにしろルディにしろ、性格と音楽業は関係ない、と言うか、ネジレた関係だって構わない、みたいな見本のようなキャラが、強烈な印象発揮してるし(笑)。
その辺が、面白い。
例によって、ラブ&バトルの、ラブの方は、あんまり読みどころを紹介できなかった。
ラブに関わるエピソードを紹介すると、どうしても、芋づるに説明したくなっちゃう事が、どうしても多くなってしまうのだ。でも、一つだけ、挙げてみたい。
隆ちゃん--/
隆ちゃん--/
うち 隆ちゃんより/
好きな人できて/
もーた/
せやから/お願いがあるんや/
史緒さん しっかり/捕まえててや/
ふたりで幸せに/なってくれへんと/うち困るねん/
神野隆の異母妹eikoが、史緒に惹かれている蘭丸とニューヨークでデートした時の心中モノローグだ。
このいじらしいようなモノローグは、アタシには、『プライド』って物語の内に響いてる“少女マンガらしさ”が結晶した箇所のような気がして、とても印象に残ってる。
それやこれや、キャラクターたちが、それぞれの修行に励んでいる間、日本ではある動きがはじめられようとしていた。それは……。
7巻に続く☆
(7巻は凄いっ!)
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書誌情報:
一条ゆかり,『プライド』6(クイーンズコミックス コーラス),集英社,Tokyo,2006.
ISBN 4-08-865356-4
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