奥瀬サキ(原作)、目黒三吉(漫画)『低俗霊DAYDREAM』3,「口寄せ屋」のポリシー
『低俗霊DAYDREAM』は、「口寄せ屋」崔樹深小姫が、現代の日本を舞台に“心霊”の関わる事件の「対策」をしていく物語。
原作、奥瀬サキさん、漫画は、目黒三吉さんの、マンガ作品で。2007年5月現在「月刊 少年エース」に連載中。単行本が9巻まで刊行されてる。
サイコ・サスペンスと、怪談風ジャパニーズ・ホラーとをハイ・ブリッドしたようなドラマだ。

3巻には、深小姫が、友人から直で自殺者の口寄せを依頼される「カミングアウト」。深小姫の自分の過去の記憶の回想と白昼夢(DAYDREAM)が入り混じって描写される「ヒルガオ」。深小姫の父親が、偶然垣間見た心霊現象の調査を、娘に依頼する「幽霊タクシー」の3編が採録されてる。
他に、7頁の「低俗霊DAYDREAMオマケ劇場」「So It's Low! 惣一郎」も採録。
採録されてるのは、「月刊 少年エース」の2001年9月号、10月号、12月号と、2002年の1月号~3月号に掲載された分、との事。
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「幽霊タクシー」では、深小姫は「朝っぱらから/くだらん怪談に/つきあっとれるか/一人で/がんばれ」と、一旦、東京都庁生活対策課職員の惣一郎を突っぱねる。
「これは/固く口止めされていたのですが」「今回の依頼人は/深小姫さんの/お父さん/なのです」と聞いて、立ち去ろうとしてた深小姫は、うっかり立ち尽くして、戻って来た自動ドアに挟まれる(笑)。
“親父も働きすぎで/ついにボケたか/幽霊タクシーなんざ/都市伝説もいい所だ”
残業帰りの父が遭遇した「幽霊を乗せた直後って話のタクシー」の調査に、渋々(?)出向いた深小姫のモノローグだ。
深小姫の父も、タクシーの車内で運転手から話を聞かされた時は、最初“ありふれた/怪談噺だ”と思った。
「幽霊タクシー」では、「ありふれた怪談噺」、今風の薄っぺらな「都市伝説」の背後に設定された、生きてる人間の悪意が細かく描写されていく。
事件は、うやむやのような決着を迎えて、深小姫は“これで/良かったとも/悪かったとも/思っちゃいないさ”と思う。そんなノリの物語だ。
直後、事件を概括するように一人語りする惣一郎に、深小姫はキレる。
「バカな奴に限って/他人の言葉の尻馬に/乗って 何もかも/わかったような/ツラするんだよな!!」
死霊の姿を見ることが出来て、彼らの言葉を聴くこともできる深小姫が、霊感の類を持たない一般人である惣一郎の概括に、八つ当たりのようにキレてみせる。この辺のやりとりから窺える、深小姫のキャラクター性は、おもしろい。
「ヒルガオ」は、夏ももう終わる頃の朝、井の頭公園の池近くで、なぜかベンチの上で目を覚ます深小姫、って情景から、描写がはじめられる。その月何度目かの朝帰りで、おまけに飲みに行ったまま、ベンチでゴロ寝だったらしい。記憶もないんだって(笑)。
深小姫本人も“不毛だ/不毛の日々だ”と思い。「不毛」がキー・ワードになって、高校時代のトラウマ体験が回想される。
物語のメイン・ボディは、回想が白昼夢(DAYDREAM)と入り混じるような内容で、ハイ・キー気味の画面が、不思議な雰囲気を演出してる。
エピローグ的なパートでは、物語内で、深小姫が惣一郎に体験談を語って聞かせてた、って場面に移るけど。深小姫が、トラウマにまつわる回想の中身までを惣一郎に語ったとは思えない。
ヒルガオのイメージは、深小姫の内では、幼少時に面倒をみてくれた婆ちゃんの記憶と結びついてる。そんな物語だ。
メイン・ボディにあたるパートのラスト(エピローグ的パートの直前)で、泣き崩れる深小姫が印象的。
深小姫が、“…たまには”“婆ちゃんの/説教でも/聞きに/帰るか……”と思うカットで、物語は終わって。もの思う深小姫のアップのコマから、広めのマージンを置いて、井の頭の池と思える花のカットが、オーラスに一こま置かれてる。
「カミングアウト」では、深小姫は東京都庁生活対策課ではなく、友人からの依頼を直で受ける。
SMなども扱うエロ雑誌「Honey Chop!」の編集者で、レズビアンのしず依からの依頼だ。
しず依が編集してる雑誌は、SM雑誌なのかもしれないけど、定かではない。SM雑誌だとしても、扱うネタはかなり柔軟みたいな気もする。SMがメインのウリのマニアックなノリのエロ雑誌って感じか(?)。
しず依の依頼は、彼女の住むマンションから飛び降り自殺をした2人の女の「口寄せ」だった。
「たとえ/口寄せが成功して/真意を問いただした/ところで」
「ハッピーエンド/なんて/
ありえないよ」
「しず依」
「--ええ/わかってるわ」
自殺者の真意を問いただせたとしても「ハッピーエンドなんてありえない」。「口寄せ屋」の経験に基づくのだろう、深小姫のアドバイスは、彼女の基本的な認識の1つのように思える。
タイトルの「カミングアウト」が、「誰が誰に向けて何をカミングアウト」した事を示唆しているのか。読めば分かり易いと思う。
物語の内容は、その「カミングアウト」で示唆された内容をキーにして読んでいくと、読み解き易い。
物語のラストで、深小姫は誰に向けるでもなく「--まあ/『だから/どうした』/って」「話/なんだけ/ど---」と語る。
「『だからどうした』って話」この、友人を突き放したようにも、友人の心情を持て余したようにも思えるセリフは、「真意を問いただせたとしてもハッピーエンドなんてありえない」と、結びつけて考えると、深小姫のキャラクター性が窺えて面白い。
最後の1コマは、マンション夜景で。ロング気味の俯瞰だ。
壁が無くて、大人の肩の少し下くらいまでの柵で囲われてる階段の踊り場には、惣一郎、深小姫としず依がたたずんでるはずだけど。姿は影に溶けてほとんど認知できない。そんなカットだ。
3巻の掲載作は、「低俗霊DAYDREAMオマケ劇場」もあわせて、みんな独立性が高い。
例えば2巻では、「エクスタシー」の独立性が高かったけど。他の2編は、前後の展開と結びつく射程の長いプロットが、織り混ぜられてる。1巻の掲載作も同様だ。
比較すると、3巻は短編集のように読むことも出来る。
後、3巻では、「口寄せ屋」としての深小姫の基本的なポリシーのようなものが窺えるようなシーンで、印象的な箇所が目立つ。
もちろん、深小姫だって、対処する事件の性質に応じて、対応方法には幅も見せる。
だから、細かく言い直せば、対処する事件の性質に応じて、微妙に異なる深小姫の言動を並べてみて、「口寄せ屋」としての基本的ポリシーを探れるような3巻の構成は面白い。
「依頼」の経緯や性質が、それぞれ異なる3編が編まれてる、って構成が効いてる。
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『低俗霊DAYDREAM』3巻採録分は、雑誌「月刊 少年エース」(角川書店)の、2001年9月号、10月号、12月号、及び、2002年1月号~3月号に掲載された分、との事。
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書誌情報:
奥瀬 サキ 原作、目黒 三吉 漫画,『低俗霊DAYDREA』3(角川コミックス・エース),角川書店,Tokyo,2002.
ISBN 4-04-713493-7
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「口寄せ屋」崔樹深小姫が、現代の日本を舞台に“心霊”の関わる事件の「対策」をしていく『低俗霊DAYDREAM』。
原作、奥瀬サキさん、漫画、目黒三吉さんで、「サイコ・サスペンスと、
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