奥瀬サキ(原作)、目黒三吉(漫画)『低俗霊DAYDREAM』7,急転回に向かう物語

「口寄せ屋」崔樹深小姫が、現代の日本を舞台に“心霊”の関わる事件の「対策」をしていく『低俗霊DAYDREAM』。
 原作、奥瀬サキさん、漫画、目黒三吉さんのマンガは、「サイコ・サスペンスと、怪談風ジャパニーズ・ホラーがハイ・ブリッド」したような物語だ。
 2007年5月現在も「月刊 少年エース」(角川書店)で掲載中。

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 7巻には、深小姫とYUO〔ユオ〕の対立のドラマの大きな山場の1つ「胎霊」、深小姫の友人のしず江(御厨しず江)が登場する好編「deadman's hand」(深小姫は登場しない)、そして、YUOとの対立プロットが急転回する「ウェルテル」の3編が採録されている。
「胎霊」は、6巻から続くエピソードで、事実上の後編。
「ウェルテル」の7巻採録分は、8巻、9巻を経てなお続く、長いプロットの物語のプロローグにあたる。

 不必要なネタバレは避けながら、7巻の読みどころや大筋を紹介しようと思うけど。
 6巻までの内容は、必要に応じて触れるので、よろしく。
用語:低俗霊DAYDREAMから、色々レヴュー記事もたぐれます。よければ、どうぞ)

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「胎霊」は、6巻から続くエピソードで、事実上の後編。
 深小姫は過去に「口寄せ屋」が「対策」に失敗していた都営住宅の一室に乗り込んでいた。
 6巻に掲載された前半にあたるパートで、一旦「対策」を試みたものの、手ひどい失敗で撤退した深小姫。
 深小姫が都営住宅に「対策」を試みたのは、この部屋で変死し、薬物中毒と死因が断定された女、油島ひじりの霊が、一時、深小姫をストーキングしてたミツル(藤原充)に憑きまとっている、と知ったからだ。
 この都営住宅の「対策」にかつて失敗していたのは、「業界では名の知れた口寄せ屋」だった双葉省吾さん。彼が「対策」に同行していた都の職員と一緒に転落死したのは、油島ひじりの変死よりも以前のこと。
 双葉省吾さんは、普段、深小姫が依頼を受ける東京都庁環境局生活対策課とは別系統の、東京都住宅局につながりを持っていた「口寄せ屋」だった。

 撤退後、都営住宅の過去を再調査した深小姫は、双葉さんの「対策」が、住宅に業務で立ち入っていた佐官工が転落死した事件をきっかけにしたものだった、と知る。
 そして、都営住宅には、油島ひじりの霊を取り込んだ、別の「縁由」があると直観した深小姫は、双葉さんの霊を導きにして再度「対策」に取り組む。

 暗い夜の室内に、蝋燭を持って入った深小姫は、一室にたたずみ、無言で壁に対している双葉さんの姿を幻視。壁紙を剥がすと、血痕の跡を発見する。
 血痕の跡を暴いたことが引き金になったかのように、女の霊に襲われる深小姫。
 猛り狂ったかのように、深小姫に襲い掛かる霊は、何事かを叫んでいるが、その声は深小姫の霊感にも意味を成さない。この辺の描写は圧巻。

“どうする!?”
“どうやって/あんな悪霊の/口寄せを…………”

 追いつめられた深小姫は、双葉さんの霊の助言を容れ、この部屋から転落死した都の職員、東堂里美の霊にシンクロする。
 深小姫が幻視する、死の直前の東堂が見たものは、排水口からあふれ出て、浴槽を一杯にする血。その内から這い出てくる、血まみれの幼児の姿だった。
 と、ここまでが、6巻採録分の「胎霊」の終盤大筋。

『低俗霊DAYDREAM』の画面は、基本的には陰影の階調が大胆に処理されてる。中間トーンはあるけど、影とハイライトのコントラストは大胆。ハイライトは白々と描かれ、物品のデッサンは、ちょっとした陰影をアクセントのように描写して立体感が表現されることが多い。そういう画調が基本だ。
 そんな内で、6巻末と7巻冒頭で描かれる、浴槽一杯の血、血まみれの幼児の幻視は、とても生々しい。迫力がある。

 東堂里美の記憶を経由して、深小姫は辛うじて、この場の支配的な霊の言葉を聞き取ることが出来る。けれど、「私には」「彼女の悲しみを/受け止められるだけの/言葉がない!」と追い込まれる。
 一方、深小姫の指示で、「対策」をウォッチしにくるだろうYUOを捕らえようと、屋外で待機していた柧武惣一郎。不振な人影を追いつめるが、伏兵に襲われ不覚をとる。朦朧とする惣一郎の前に姿を現わしたミツルは、YUOのグループと行動を共にしているようだった。
 YUOの仲間が口にする「大直の鑽火〔おおなおのきりび〕」とは?
 そして、ミツルの実家、琶成神社でも、不穏な気配がうごめく。

 7巻巻末に収められている「ウェルテル」では、警視庁の峨田警視が、再び深小姫の前に姿を現わす。
「“大直の鑽火”が/執り行われるまで」「あと/27時間」
「本日/午前九時十五分/被疑者/井荻ユオを」「複数件の/自殺関与の疑いで/通常逮捕/しました」と、事態の急展開が告げられる。

 峨田警視は、深小姫に正面から協力を要請してくる。
 YUOは「心を/病んでいます」「彼には我々の/言葉は届いて/いません」。「この後 彼は/家庭裁判所に送致され/精神鑑定を受ける/ことになるでしょう」「結果/少年審判所において/不処分あるいは/保護観察となる/公算が高い」と--。

「彼が事件の/真相を供述/することは
 永久に/ないでしょう/---だから」
「ユオを口寄/しろと?」
「バカな!」
「口寄せ屋は/精神科医でも/刑事でもないわ!!」
「生きている人間の/口寄せなんて/できるわけないし/する意味がない!!」

「第一 口寄せなら/あなたの/パートナーに…」と言う深小姫に、峨田警視は、さらに急転していた事態を告げる。

「…明日/朝9時ね」
「行くわ」
「私は/自分の意思で/行く」
「誰の依頼/でもない/
 だから私は/自分の/やり方でやる」
「タイムリミットは?」
「明後日の/未明、/
 午前二時/四十五分!!」

 こうして、深小姫とYUOとの対立のドラマは、いよいよ「大直の鑽火」を焦点にして、大きな山場を迎えていく。
「ウェルテル」は、8巻、9巻を経てなお続く、長いプロットの物語。7巻掲載分は、そのプロローグにあたる。

「胎霊」事実上の後編にあたるパートと、巻末に収められた「ウェルテル」の間に収められた「deadman's hand」に、深小姫は登場しない。
 深小姫の友人、エロ雑誌、“Honey Chop!”編集長のしず江(御厨しず江)が、フリーライターのキナコ(森澤キナコ)、編集者の小林くん(小林史明)を伴って、雀荘「リオデジャネイロ」を訪れる。
 3人は、それと知らずに曰く付の台で麻雀を打つことになるが……。

『低俗霊DAYDREAM』では、緊迫するメイン・プロットの息抜きででもあるかのように、物語の調子が相当に違う掌編が、間に挟まれることがある。
「deadman's hand」もそのタイプのエピソードで。ファンの内でも、いろいろ意見があると思う。
 アタシ(紹介者)は、「deadman's hand」は好ましい1編だと思う。

 麻雀を打つ内に、しず江は「リオデジャネイロ」という店名を思い出す。半年くらい前に、消費者金融の債権回収業者が刺された事件の報道で、「ちらっと看板が/映ってた」店だと。

“深小姫だったら/何か見えたり/感じたりしたかも/しれないけど…”
“ま/私たちには/関係ないか”

 この“私たちには/関係ないか”って、視点が織り込まれたエピソードがいいと思う。
 しず江を含めた3人には、文字通り「関係ない」けれど、1時間ほど遅れてくることになった面子の代打ちで卓を囲むことになった、店の常連には「関係ない」ことはなかった。
 死者の思いと、死者に対する思いとが、関係ある人物と関係ない人物との間ですれ違う、あるいは、それと気づかれずに一瞬交差する様を、読者だけは垣間見る、そんなエピソードだ。

 他の「深小姫が登場しないエピソード」では、今のところ、深小姫以外の「口寄せ屋」の「対策」が描かれている。
「deadman's hand」では、深小姫以外の「口寄せ屋」すら登場しない。
 これと同じような趣向の作品が、たびたび織り込まれたら、アタシもちょっとどうかな? と危惧はするでしょうけど。
 1編だけ、という現状では、『低俗霊DAYDREAM』って長い物語の内で、生者と死者の関係に「口寄せ屋」抜きで焦点をあてた物語パーツとして、ユニークな位置を占めてると思う。

「口寄せ屋」が登場する他のエピソードで、「死者と生者の関係」が描かれていないわけではない。
 ただ、ほとんどすべての場合で、「死者と生者の関係」に何かのトラブルがあるので「口寄せ屋」になんらかの依頼がなされる。
「deadman's hand」は、トラブルにまでには到っていない「死者と生者の関係」が描かれたエピソード。
 さらに言えば、大都会の隅で、伝統的な宗教の形式に収められていないだろう「死者と生者の関係」が描かれたエピソードだ。
 そこがいい。
 単独の物語のように読んでも悪くないし、『低俗霊DAYDREAM』の内に織り込まれることで、独特の内容を担う型になってる。

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『低俗霊DAYDREAM』7巻採録分は、雑誌「月刊 少年エース」(角川書店)の、2004年7月号~10月号と、2005年4月号、5月号とに掲載された分、との事。

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書誌情報:
奥瀬 サキ 原作、目黒 三吉 漫画,『低俗霊DAYDREA』7(角川コミックス・エース),角川書店,Tokyo,2005.
ISBN 4-04-713730-8

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Drupal.cre.jp から 金, 2008-02-01 18:09 受信

 原作、奥瀬サキさん、漫画、目黒三吉さんの「低俗霊DAYDREAM」は、「口寄せ屋」崔樹深小姫が、現代日本を舞台に、心霊が関わる事件へ「対策」をしていく物語。
 8巻で、小姫は、いよ


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