『七都市物語』田中芳樹 薄いのではない、端折っているのだ

■本日の読書:『七都市物語田中芳樹

 かなりぼろぼろになっているのだが、それでも読み直す。

 この本が出た1990年というと私は東京勤務で、本場の朝のラッシュというものを体感していたのであるが、ぎゅうぎゅう詰めになりながら「七都市物語の世界だと、こんなコトはないんだよなぁ」などと考えていたものである。

 当時は田中芳樹さんの作品でミリタリ的に“薄い”部分に不満を抱くことも多かったのだが、今こうして読み直してみるとよくぞ、ここまで“薄く”できたものであると、畏敬の念を抱かずにはいられない。

 “薄く”というよりは、“端折る”であろうか。
 本書に掲載されている『北極海戦線』『ポルタ・ニグレ掃滅戦』『ペルー海峡攻防戦』『ジャスモード会戦』『ブエノス・ゾンデ再攻略戦』のいずれも、みっちり描けばそれぞれ本1冊分ぐらいにはなる。

 それを短編にするだけなら、まあ難しくはない。
 しかし、短編にした上で、なおかつケネス・ギルフォード、AAA、シュタミッツとクルガン、ギュンター・ノルトら魅力的なキャラを描ききるとなると、これは難しい。
 田中芳樹さんの優れた手腕あればこそだろう。

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