論考:送信可能化権と著作権ビジネス
スラッシュドットジャパンのYahoo!ビデオキャストが著作物使用料を代理払いという記事でついでにいろいろ調べていたら、日本の著作権ビジネスの構造的欠陥が浮かんできた。
テレビ番組では市販の音楽CDをよくBGMに使っているが、これと同じ内容の番組はそのままではインターネットで配信できない。
なぜかと言うと、放送では「二次使用料請求権」と言う形で間接的にしか禁止する権利を持たない著作隣接権利者が、公衆送信では「送信可能化権」という完全拒否権を持っているからである。
放送での番組制作に著作物を使用される場合に逐一個別に許諾を求められては、制作側にも権利者側にも大きな負担になる。そのため、権利者はJASRACのような著作財産権管理業者に管理を委託することで複数の権利者に対する権利処理を統括的に行う仕組みになっている。
著作権と著作隣接権は双方に対して認められそれぞれ独立して存在している権利なので、著作者が公衆送信権をJASRACに委託した場合でも著作隣接権者の公衆送信権はJASRACには委託されない。
JASRACが請け負うのはあくまで著作者本人の著作財産権であり、著作隣接権までは扱っていない。そのため、音源を放送に使用する場合はJASRACに加えて実演家の代表団体である実演家著作隣接権センター(CPRA)と、出版社の代表団体である日本レコード協会(RAIJ)が文化庁長官の指定を受けて二次使用料請求権による使用料の代理徴収を行っている。
ところが、インターネット配信に該当する送信可能化権に関しては、著作隣接権者の委託業務を行っている組織が存在しないのである。法律上は著作隣接権といえども第三者への権利譲渡は可能なはずなのだが、世の中の仕組みがそういう風にできてないため、インターネット配信による映像番組制作に大きな制約が課されているわけである。
この放送とインターネット配信における音楽素材利用の権利処理の不備は、インターネットでの映像配信ビジネスを行う場合の大きな障壁であることは間違いない。例えば、NHKアーカイブスの立ち上げが権利問題で難航したのが良い実例だろう。
送信可能化権を含む公衆送信権が公布されたのは平成9年、もう10年も前の話である。これだけの時間が過ぎているにもかかわらず、体系だった権利処理システムが構築されていないのは業界全体の怠慢と言えるのではないだろうか。
参考リンク:
実演家著作隣接権センター
日本レコード協会
著作隣接権
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