歴史小説


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『ご主人様は山猫姫7 北域見習い英雄編』鷹見一幸/南方で反乱! 昏迷を深める延喜帝国の現状を『太平記』(ゲームデザイン:中嶋真)システム的に見てみる。

 『ご主人様は山猫姫』もなんだかんだで7巻であります。
 この巻では6巻の勝利の後、晴凛が北域王になります。旧緑軍や延声を吸収して一大勢力へとのしあがりました。
 順調そうに見えますが組織の急速な拡大は脆さも含みます。しばらくは体制堅めに時間をかけたいところです。
 しかし、それどころではないのが南方です。承安の塩商人たちが中心となって反乱が起きたのです。南の、豊かで人口も多い承安は月原弦斉を旗頭にたちまち15万の大軍を集めます。

『十字軍物語2』塩野七生 「イスラムにサラディンあり」圧倒的少数となったフランク人が築き上げた城塞の数々に萌え

 塩野七生さんの十字軍物語。1巻はフランク人やらノルマン人やらの次男三男が大挙して聖地へ乗り出すユースバルジ的展開を描いたものであったが、2巻はしてやられたアラブ側の反撃である。
 修道士ベルナールをはじめ、宗教的情熱へ燃える方への塩野七生さんの筆致は相変わらず辛辣で、好きな人には快感を、嫌いな人には苦痛を与えるものとなっている。私は大好きなのだが、これは人を選ぶものであろう。
 その代表として、第二回十字軍を主導した修道士ベルナールがなぜ一介の修道士でありながら、権力者にも一般の人にも絶大な人気を誇ったのかについての描写を引用しよう。

『魔群の通過 天狗党叙事詩』山田風太郎 「そうせざるをえなかった」人々の、避けることのできぬ争乱と悲劇

 水戸の天狗党の乱――と言えば、幕末の歴史を紐解けば、しばしば登場する事件である。大学受験で日本史を選択した受験生ならば、かなりの確率で一度は年号を含めて目にしたことがあるだろうし、幕末・維新に興味がある人ならば、もう少し詳しいことを知っているかもしれない。

 黄門様で知られる水戸藩は、徳川の親藩であると同時に、勤皇の思想が高いところであった。徳川の治世が盤石であれば、勤皇と幕藩体制は必ずしも乖離しておらず、それなりに安定していた。

『密偵ファルコ17 最後の神託』リンゼイ・デイヴィス ギリシア観光パックツアーで新婚旅行のカップルを襲った悲劇! 残された夫は妻を殺した犯人を探すために神の託宣にすべてを賭ける!

 あらすじを読んだ時に最初に思い出したのが、いしいひさいちさんの『コミカル・ヒストリー・ツアー』で描かれた、『神託はデルフォイ神託銀行』というたいへんバカなポスターであった。

 現代的な目ではおみくじと大差のない神託であるが、時は紀元1世紀の古代地中海世界だ。
 すでにだいぶ廃れていたとはいえ、デルフォイ(作中はデルポイ)の神託といえば、古代地中海世界では霊験あらたかなものとして広く知られていたのだ。

『ニコラ警視の事件 鉛を呑まされた男』18世紀フランスを舞台とした歴史ミステリの2冊目。お腹の空く描写は今回も健在。

 歴史ミステリで私がいつも楽しみにしているのが1世紀の古代ローマを舞台にした『密偵ファルコ』と、18世紀のフランスを舞台とした『ニコラ警視の事件』である。

 ニコラ警視は革命前のパリに住んでいる。王様はルイ15世。日本では、王様の名前よりも愛妾であるポンパドゥール夫人(あるいはデュバリ夫人)の方が有名かもしれない。ご本人も無名というわけではないのだが、先代が太陽王として有名なルイ14世(15世にとっては曾祖父)。そして次の代が革命によってギロチンに消えたルイ16世(15世にとっては孫)であるため、その間にはさまれる形でなんとなく影が薄い。

『新楊家将 血涙』北方謙三 なぜ新生楊家軍は弱くなったか

 『楊家将』の続編である『新楊家将 血涙』は、まぎれもなく傑作である。

 前作で、壊滅的な打撃を受けた楊家軍を、生き残った楊業の末子たちが苦労して再建する序盤から、先の大戦で記憶を失った青年が遼軍の中で重用されていく中盤、そして両者の激突によって明らかになる悲しくも衝撃的な真実――上巻だけでもお腹一杯になるほどの盛り上がりだ。

 さて、その素晴らしさについては、前作同様に実際に読んでいただくとして――『楊家将』が面白かった人なら、絶対にハズレはありません――ここでは、本筋とは少しズレて、新生した楊家軍がなぜ弱くなったかを考えてみたい。

『楊家将』北方謙三 最強の軍閥、“楊不敗”と、その限界

 『楊家将』という作品について知ったのは、田中芳樹さんのインタビュー記事だったかと思う。
 随唐の時代が終わり、諸国分裂の時代を過ぎて、中国は宋という国家によって統一される。
 しかし、宋は北方の金に国土の北半分を奪われ南に逃げる。そしてさらにモンゴル帝国によって滅ぼされ、征服されるのだ。

 当時、そして後の中国の人にとって、この宋が滅びた時期というのは特別な思いがあるらしい。なぜ、偉大な漢民族の国家が、中華の帝国が、宋の時代以降、周囲の蛮族に脅かされるようになったのか。

「兵は詭道なり 斎藤道三 3」岩井三四二 著

 成功し、国主になって引退して息子に任せても、院政の如く実権を手放さない困った親父斎藤道三の最後です。
結局の所、本人より傘下にいる人たちが「引退してもらわないとデメリットが多い」vs「引退されるとデメリットが多い」で争うので、
勝手に画策して内乱になってしまった。と言う形ですが、本人も灰汁が強いからなぁ……
年を取っても、決して丸くなったりしない美濃の蝮が素敵です。
まぁ、息子の視点から見れば迷惑極まりない人ですがっ(笑)

『ニコラ警視の事件 ブラン・マントー通りの謎』ジャン=フランソワ・パロ フランス革命前の18世紀フランスを舞台にした歴史ミステリ 食い物などの生活に関する描写や泥と悪臭にまみれたパリの描写も秀逸

 『密偵ファルコ』の新刊を取り寄せるときに、そういえばフランス革命前を舞台にした歴史ミステリで面白いのがあると聞いていたので合わせて読んでみたのが、この『ブラン・マントー通りの謎』です。

 18世紀、1761年のフランス。
 1761年といえば、日本では江戸時代のまっただ中、ヨーロッパではプロイセンのフリードリヒ大王が大暴れして七年戦争を戦っていた真っ最中です。フランスもまた、この戦争に巻き込まれて海外植民地を巡ってイギリスと激しく争っていました。かつての太陽王、ルイ14世の統治は過去のものとなり、ルイ15世の統治にあります。世界に冠たるフランス王国はあちこちで軋みをあげ、30年後のフランス革命へとつながる財政と統治の破綻が目の前に来ていました。

「兵は詭道なり 斎藤道三 2」岩井三四二 著

 斎藤道三の歴史小説です。

 実力で伸し上がるものの、掌握しきれない地元の有力者、方針の対立で反発する息子、利権を求めて抗争を繰り広げる近隣諸国。
終わることのない、そして、選択を一つ間違えれば全てが破綻するかに見える問題が、常に山積みになっています。
悪戦苦闘するあくの強い斎藤道三の姿が魅力的です。

 まぁ、泥沼を這いずり回るベトナム戦争の如き、格好良さではありますが。

Cover image

『密偵ファルコ13 疑惑の王宮建設』リンゼイ・デイヴィス 二千年前のローマに住む、それでも我らの隣人たち

■本日の読書:『密偵ファルコ13 疑惑の王宮建設リンゼイ・デイヴィス

 ファルコの13巻。
 時は紀元0075年の春。二女も生まれて広い家に引っ越しをしたファルコは、ローマ皇帝から公共事業の監査を頼まれる。それがブリタニア王の王宮建設である。

 なぜローマ皇帝がブリタニア王の宮殿を建設するのか?

 ローマ帝国中華帝国とはちょっと違う。もともとがローマと周辺諸都市の同盟関係が拡大してできたものなので、国境周辺の王様とか酋長とかを同盟者として比較的大事にするのだ。このあたり、周辺諸国は蛮族として朝貢させるような中華帝国とはやや違う。アジアは中華文明こそが他を圧し、ほかに比肩すべき文明を持つ国はなかったが、ローマ帝国はギリシアとか中東とかの優れた文明や知識を得て育った若い国家なのである。


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